素直に消費税8%への増税は日本の景気低迷を招いた大失策だったと認めて税率5%に戻せば良いものを財務相も安倍政権もそうは動かない。なんともセコい手というべきか、先のことを考えていないその場しのぎというべきか、財務相は6月末までに公共工事の半数ほどを前倒しで執行していたというのだ。そうすれば7-9月期のGDPに少しは好影響が出るのではないかと目論んでいるようだ。恐るべきことは、そんな公共事業前倒しをやっていたというのに今の日本はこの程度の景気なのかということ。それほどまに消費税増税のインパクトは強かったということだ。もし公共工事の半分も前倒し執行していなければ、今のところ唯一景気が良いと言われている建設業すらも酷い有り様だったのかもしれない。
公共工事の前倒し「今後GDP成長率に反映」財務省(ANN)
財務省は、消費税率引き上げによる景気減速を緩和するための公共工事などの前倒し執行が順調に進んでいることを明らかにしました。
財務省によりますと、今年度予算のうち、
公共工事など12.2兆円分の契約について、6月末までに5割近くが前倒し執行されました。当初、計画では4割 以上を目指していましたが、それを約1割上回りました。また、昨年度の補正予算については、公共工事など3.4兆円分も、先月末までに7割を実施するという目標に到達しました。人手不足や資材の高騰によって入札が不調だった大規模工事も、予定価格の引き上げにより、契約は予定通りに進んだということです。
財務省は「今後、工事が進めば7月から9月のGDP(国内総生産)の成長率に本格的に反映される」としています。
前倒しという表現を使っているものの、増税に次ぐ増税で無理矢理にでも納税者たちから集めた予算を先走って使っているようにしか見えない。借金をして高額なものを購入しても自慢にはならないことと同様にして、公共工事を前倒しして建設業界を好景気にしたところで、その公共工事の為の予算が好景気による税収増ではなくて、国民が泣きに泣いた納税によって成り立っていることを財務相や安倍政権が自慢気に語ったところで馬鹿馬鹿しくて聞く気もおきない。
そりゃ多額の借金をすれば誰だって家をリフォームすることもできるだろうし自家用車を購入することもできる。事情を知らないご近所さんからしてみれば、その家の収入は高く安定しているように見えるかもしれない。だが借金は借金だ。前倒しも前倒しに過ぎない。前倒ししなければ回復しないような景気ならばそれはいわば国内景気の体力不足のようなもので、いくらドーピングしたところで根本的な解決にはならないどころかドーピングはいつまでも続けられるものではなくやり過ぎると死に至る。
公共事業をやっていた真っ最中だった4-6月期のGDPが-6.8だったのだから、そのドーピングのような公共工事の前倒しをしなければマイナス二桁もあったのではないだろうか?見せかけの数字で誤魔化すつもりでも-6.8%も下がったことに実は財務相も焦ったのではないだろうか?日本の景気は相当に深刻な事態に陥っているのかもしれない。
そもそもアベノミクスの大きな矛盾はアベノミクスで景気が上がると言いつつも消費税は増税するところだ。景気が回復しているのならば税収が上がるのだから消費税増税をするまでもないはずだ。ところが8%の時もまるで予定調和のように増税され、10%もまるで既に決まっているかのような扱いだ。安倍政権の閣僚の誰もが既に10%でないと日本が危ないかのような表現で語っているが、そもそもアベノミクスが上手く行っている言い張っている者たちがなんでそこまで増税をしないと日本が危ないと言うのか?言っていることが矛盾している。自分たちの大失敗を認めずに責任は国民に取らせるというのならば政治家はいったいなんの為に存在しているのか?
前倒しという表現もソフト過ぎる。要は前借りや借金ということだ。そういうことが事態の解決に至らないことは誰だって知っている。どんな事態の財政再建でも、前借りも借金もしないで自分で稼いだお金で解決しなければ問題の先送りに過ぎないのだ。前倒しという手は何度も使えるものではない。前倒しをする為の予算が尽きればそこで終わり。後には前倒しをしなかったほうがまだマシだったと思えるほどの苦境が待っている。消費税増税をしなければ今の日本はもっと好景気だったことは疑いようもないことだ。それでも財務相も安倍政権も消費税増税を断行した。その判断は明らかに間違っていた。間違っていないのならば公共工事の前倒しをする必要はなかったのだから。
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