吉野家への不買運動を続けて何年だったろうか、ブログを移転する前からずっとBSE問題が発覚した後の吉野家対応、もっと具体的に言えば当時の社長の言動がどうにも納得がいかずに留学時代には日本食が懐かしくて夢にまで見た吉野家の牛丼を食べるのを好きなだけ吉牛が食べられる環境で止めた。アメリカの精肉工場がマニュアルを徹底させるにも時間がかかる上にそもそも英語のマニュアルが通じない従業員たちがいる場合の対処が不完全だと判断し、米国産牛肉を安易に使用する吉野家に大いに憤ったからだ。当時、オーストラリアの精肉工場の徹底した危険部位除去への取り組みとアメリカのそれとでは危険への認識に大きな乖離があり、なぜにそこまで日本の一部企業が米国産牛肉にこだわったのか今もって釈然としない。ちなみに当時、「今年中」という期限を設けて、もし米国の食肉加工工場から吉野家に輸出される精肉から危険部位が1度も発見されなかったらブログを辞めると宣言したが数ヶ月後には危険部位の輸入が発覚した。
吉野家の当時の社長はもう退いており、長い月日が経ちアメリカの精肉工場の危険部位除去への取り組みも進んでいる。今は特に日本に輸入される米国産牛肉を心配していない。さすがに今はアメリカの食肉関係者たちがBSEのことを意識していないなんてことは先ず無い。恐るべきことではあるが日本でBSE問題が頻繁に取沙汰されていた時、アメリカではほとんどBSEは話題にならなかった。本当に「ほとんど」だ。なにしろ3大ネットワークですらイギリスで狂牛病にかかった牛が倒れる映像や狂牛病患者がいるということすらも放送しなかったのだ。テレビでもネットでも報道機関はそれに触れず、米国内でBSE問題を追うジャーナリストは報道の仕事では食べていけないほど干されるといった有り様だった。食肉についてもアメリカにはメージャーと呼ばれる巨大な企業複合体が存在し、そのメージャーがロビー活動で政治家を動かし、巨大なスポンサーとしてメディアが不都合な情報を流すことを食い止めていることは公然の秘密だ。同じように煙草、自動車(液体燃料)、穀物、石油など、巨大な産業が消費者の利益や健康とは関係なく自己の利益追求の為に暴走している感がある。
何十年間も食べていた吉牛ではあったがさすがに7、8年のブランクがあると行くことに多少の緊張感が出た。
映画「箱入り息子の恋」を劇場で観てから1年半あまり、あの劇中での吉野家の牛丼を観ても個人的な
不買運動を止めなかったが、吉野家自体の体制がだいぶ変化したことと、都内某所の過去には東京砂漠と呼ばれていた地へのチャレンジングな出店決断(まだ、ありません)など、そしてなにより吉牛食べている人たちが
羨ましい幸せそうなことを鑑みて、そろそろ不買も潮時だろうと判断した。
もうひとつ不買をそろそろ止めようと決めた大きな理由がある。友人でもあるアメリカ企業のCEOが日本大好きで先日来日したときに色々とアドバイスしたのだがビジネスの話は簡潔に10分程度で済ませ、もっと重要なアジェンダとして「東京に来たらこれだけは食っておけ!」について熱く30分は議論した。ミジンコがオススメしたのは横浜家系ラーメンと回転寿司と牛丼だった。有名な鮨屋や天ぷら屋、ミシュランガイドに載っているような店にはそのCEOはまったく興味を示さず、現役庶民のミジンコの飲食店情報を心から信頼しているのだ。そもそも米国のベンチャー企業の創業者たちは大抵が質素な暮らしを大金持ちになってからも好み、それは格好つけて庶民派を気取るといった類いのものではなく、本当にその方がラクチンだからそうしているだけなのだ。今は大富豪と呼ばれる生まれもっての金持ちたちよりも資産があるであろうCEOたちは東京でも普通に居酒屋に入り電車に乗っている。信じられない話だろうがボディーガードすらもつけていないでミジンコと二人でJRや東京メトロに乗る。都内有数の高級なホテルのロビーを出てそのまま歩いてファミレスに入ったこともある。そしてファミレスの店員さんのお辞儀の深さに驚愕するCEOたちなのであった。
吉野家に赴くにあたり、その日本大好きっ子なCEOを事前の打ち合わせ。牛丼のやわらかい白米は日本人には美味しいがそのCEOには味が無くて食べ難いと見た。ここは白米に味付けする日本の伝統文化「つゆだく」を教えておかなければならない。ミジンコが注文すれば良いだけの話なのだが、超面倒くさい性格のCEOくんは自分でなんでもチャレンジしないと気が済まないのだ。
「いいか、Nami Tsuyudaku(並 つゆだく)だぞ。リピートアフターミー。」「ナミ、ツユダクー!」と復唱するCEO。10回はやっただろうか、人生でこんだけつゆだくを連呼することも2度と無いことだろう。
いざ吉野家に出陣じゃ!
CEO「ナミ、
ツユダケー」
あんだけ練習したのに!
並盛りのゴハンに汁だけかかっているシュールなものが出てくるのを防ぐためにもはやそのCEOのお母さんと化していたミジンコが訂正しておいた。
牛丼おいしゅうございました。
[19回]
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