こんなことは社会人としての常識の話になるのだがアポなしでいきなり会いたいと望んだところでそれが叶うことはなかなか無い。基本、面談を望むならば事前に先方の予定をお尋ねして先方の都合に合わせることがマナーだ。多忙な者同士、両者の予定のすり合わせがなかなか上手くいかない時はお互いの立場、要は「会っていただきたいと望む者」が工夫して会えるようにするべきだ。
一応は当ブログの管理人もアポ取りが難しいと言われている立場ではある。5分の隙もないというほどの日常ではないが、実際誰かに会ったことによって進み始めてしまう案件をなるべく控えたいというのが本当のところ。先方にとってはいわばチャンスのような案件だとしても、こちらとしては抱えきれないということもしばしばあり、しかも過去の経験から結局の仕事量が段々と話を持ってきた先方よりも結局はこちらの方へウェイトがのしかかるということが数多く、正直いってそんな手間な案件を抱えるよりも自分たちで最初から最後までやり遂げる案件を優先したいのだ。安易にアポイントメントを受けると先方にこちらとしては不本意な期待を抱かせてしまうこともある。それは罪なことだという考えもあり、面談前の段階である程度は当方としてもまだまだ検討したいという気持ちが強いものの、進める可能性がまったくないというわけではない件でしか面談までは進めないというのが先方への礼儀だと考えている。
もうずっと昔の話なのではあるが、シリコンバレーのベンチャー企業のCEOとCTO(最高技術責任者)とそのベンチャーへの投資家である自分とで巨大IT企業との面談に望んだことがある。そのアポを取ったのは自分だった。ミジンコが携わっている他の企業との取引などで親しい間柄の企業ではあったのでミジンコに相当に配慮してくれての面談設定だった。面談してこちらのプレゼンを見てくださったその企業の方々とはミジンコも初顔合わせで、旧知の方々はその件では直接的に関わる部門ではないところ所属であったり、取締役なのでいきなり最初のプレゼンには出席しないという状況だった。まぁ、結果から言えば惨敗だった。それでも時間も人も使って面談をセッティングしていただいた企業には感謝しているが、話の冒頭からして可能性がゼロといった感のある面談の辛いこと辛いこと。そしてよくよく考えたら自分も同じような立場で面談の申し込みがあれば簡単に受けていたなと反省した。その企業よりもよほど酷なことをしていたのかもしれない。例えば会社の前で待っているデザイン部門志望の学生さんたちの作品をチラっとでも見てしまったり、カリフォルニアではもっと酷いことにエンジニア志望の青年がやってくる度に会社案内までしていた。シリコンバレーのベンチャー企業には例え小規模なベンチャーといえ、相当なスキルが無いことには入社できない。むしろ小さい会社の方が抜きん出た技術力を有する社員を求めている。理工系の学部卒というだけではかなり厳しいのが現実だ。若手起業家たちが提携話を持ち込んできてはどんなに長いプレゼンだろうがアポなしでも予定が合えば聞いて晩飯が深夜0時になったことなんて何十回もある。それでも企業としては簡単に提携話は進められない。99%が倒産か安値で吸収されてしまうような世界で安易にイイネ!と提携するのは自殺行為だ。血気盛んなアポなし行動も実は悪くはないと感じる部分もあるのだが、現実的に彼等がその世界で通じるのか否かは別問題だった。残酷な親切心とでも言うべきか、とにかく今は相手にあまり淡い期待を抱かせることは控えるようにしている。
アポイントメントとは受ける側としても、そのくらい深く考え慎重になるべきことなのではないだろうか?そりゃ会いたがっている人々に会ってあげたいという気持ちも人情というものだ。それでも最初から先方の期待通りにはいかないと分かっている件、先方の申し出の実現性が乏しいと感じた場合、「会わない」という選択はそれほど酷い対応とは思えない。会ってみて「やっぱりダメ」というよりもよほどお互いの為だ。
沖縄県・翁長知事がアポなしで上京して日本国の首相や官房長官との面談が叶わなかったと不満のようだ。それを沖縄タイムスがまるで悲劇のように報じている。詳しくは→
翁長知事、政府と面談未定 キビ交渉、異例の事態(沖縄タイムス)
沖縄県知事は「サトウキビ交付金関係の政府要請、全国知事会出席のため上京した」とある。政府への交付金交渉についてアポなしとは余りにも非常識だ。沖縄タイムスは基地問題で政府と対立する沖縄県知事が冷遇されているという論調だが、そういう面よりも先ずはアポイントなしで首相や官房長官に会おうとする知事の非常識さについて言及するべきだ。それに山口俊一沖縄担当相との面談は実現しているのだから政府がなにも沖縄県知事を拒絶したというわけでもない。むしろいきなりやって来た知事に対して閣僚が時間を割いているのだから政府としては随分と歩み寄っていると考える方が自然だろう。
仲井真前知事時代は沖縄県は政府と交渉できていたのに今度の知事では政府に拒絶されているといった沖縄タイムスの論調も整合性に欠ける。当時の仲井真知事だってアポなしでは簡単に日本国の首相との面談は実現しなかったはずだ。単にアポあり・なしの話を変に歪曲させて、まるで政府が今の沖縄県知事に限って拒絶しているかのうような報道は中立性も公平性にも欠けている。どこの誰であろうと首相や官房長官にアポなしでは会えないという当たり前のことをいちいち基地問題に絡めて語ることはフェアではない。
これは今の沖縄県知事と沖縄タイムスとのマッチポンプのようなものだ。アポなしでは会えないと分かっているくせに首相や官房長官に会おうとして結果として会えなかったら「基地問題で対立する政府が沖縄を冷遇している!」と大声を上げる知事、そしてそれを更に歪曲して伝える沖縄タイムス。もはやアポなしという根幹の部分は無かったことにされて、ひたすら「政府は沖縄を見捨てるのかー!」という大合唱だ。これでは首相が会ってくれなかったという状況を作り出す為のヘタクソな演出だ。そうじゃない。首相はアポなしでは会えない。それだけの話だ。
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