本当はこの映画のレビューだけは書くことは無いと考えていたのだけれど“日本でまで”ヒットしているようなのでミジンコなりのレビューをば。
先ず第一に、映画監督のデヴィッド・フィンチャー並びに原作本の著者や脚本家などが、あたかも実話をベースにしたかのように熱心にアピールしていたが、それは真っ赤な嘘。映画の冒頭からエンディングまでほとんどが創作であって登場人物全員が今も劇中で描かれている立場とほぼ同じ状況であるにも関わらず、よくもまぁ、こういう映画を作ったものだと、映画製作陣のずーずーしさと、ヒット作を生み出すためならば実在する登場人物たちの今後の生活に支障が出るのであろうほどのことも平気でやってしまうモラルの低さに呆れた。
残念ながらというべきか、その過度の演出が功を奏したのか、アメリカでも「実話ベース」であるという大いなる誤解を利用しながらの大ヒット。批評家たちの評価もすこぶる良い。そして日本での公開から2日。大ヒットしている模様。
確かに映画自体は人間ドラマとして抜群に面白かった。主演のジェシー・アイゼンバーグはまるでマーク・ザッカーバーグそのものに見えたほど。喋り方の癖、話すスピード、コンピューターオタク丸出しなところなど、オスカー(最優秀主演男優賞)は彼だと思えるほど。
問題は返す返すも出てくるエピソード、エピソードが事実とは大きく異なるところ。なんでミジンコがそこまでわかるんだと言われてしまえばそれまでなのだが、本当に違うものは違うとしか言いようがない。相当な悪意を持って製作された映画だと言わざるを得ないのだ。なにしろ監督のフィンチャーは「自分が19歳のときのことを映画化されたくなんかない」と言っているくせにこういう映画を作る男なのだ。そう、この映画の監督は、人が嫌がることも平気でできるわけだ。
更に突っ込みたい。結局のところ、原作本の著者も脚本家もまともにfacebook創業に関わった重要人物たちの誰一人にも直接取材ができていないのだ。
wikipedia「ソーシャル・ネットワーク」から引用:
facebook側の反応
映画を作成するにあたり、脚本を担当したソーキンは実際にマーク・ザッカーバーグに取材を申し込んだが断られた。ソーキンは後に「最終的には映画の客観性を保つ意味ではそれで良かった」と述懐している。
また、書籍の著者であるベン・メズリックも、ザッカーバーグだけでなく当時を最もよく知る人物としてエドゥアルド・サヴェリンに取材を申し込んだが、双方ともに拒絶された。
上記のような経緯により完成した映画・書籍はfacebook側の協力は得ずに作られており、サヴェリンの視点に偏っている部分が多く見受けられる。ただし、サヴェリンは映画完成後に極秘裡にプライベートで視聴をした。ザッカーバーグも全米公開後に映画館を借りきりfacebook社員全員と共に見た。その後にザッカーバーグが行ったスタンフォード大学での講演にて、社会的地位を得るためにfacebookを立ち上げたように描かれている点が事実と異なるとコメントした。一方で、「映画の中でキャストが着ているシャツやフリースは、実際僕が着ているものと同じだよ」と、衣裳に関しては評価した。また、自身を演じたアイゼンバーグの演技についても「中々良かった」とコメントした模様。(facebookの社員であるアイゼンバーグの従兄弟からアイゼンバーグが又聞きしたところによる)
つまり当事者たちからの取材を断られ続けた挙句に映画を完成させたものだから、映画製作に参考としたのはマーク・ザッカーバーグや他の関係者たちの過去のブログでの発言など“誰でも知っている情報のみ”で実話をベースにしたと称する映画を完成させたわけだ。
それでも映画は大ヒット。確かに時間を忘れるほど面白い。困った作品だ。映画としては本当によくできているのだが素直に評価ができない。
シリコンバレーの新興企業がどのようにスタートアップして、注目企業となった場合はどのくらい猛スピードで成長するのかを少しは垣間見れるので、今後更に増えるであろう日本からシリコンバレーの企業に参加しようという人々には良い刺激になる作品かもしれない。マーク・ザッカーバーグを演じるアイゼンバーグの会話を全て聴き取ってすぐに返事ができると思った方はなんとかなるかも。確かに早口ではあるのだけれど、あんな感じで会話が進むのがシリコンバレー流だとは思う。字幕版だとどうなっているんだろう?たぶん喋っていることの半分も字幕に再現できないと思うのだけれど・・・・・。
日本での宣伝でもやけに「裏切り」という部分を強調していたけれど、シリコンバレーのベンチャー企業で創業メンバーのままで進む企業なんて極僅かだということは言っておきたい。それを仲違いだとか裏切りだと評するのは非常に安易な発想だ。創業メンバー同士の訴訟合戦は確かに見ていて愉快なものではないがそれを回避してIPO(上場)まで目指すことのなんと難しいことか。確かに映画化すれば面白い題材だったとは思うが当事者たちには当事者たちにしかわからないであろう思いがあるはずだ。ああ、本当は色々と言いたいことはあるのだけれど上手く言えない自分がもどかしい。
ああ、フィンチャーの「ベンジャミン・バトン」は死ぬほどつまらなかった!!!・・・・・ちょっとだけスッキリ。
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