グルーポンのシステムについての悪評、特に「結局のところグルーポンだけが確実に儲けられるシステム」など、もうミジンコがここで説明するまでもないほど皆さんも認識されていることかと。
まぁ、賛否両論は今だあるものの、ミジンコとしてはこういう事業モデルをやる方もやる方だし、それについ参加してしまう店も店という印象。
ちょっと考えればそんなクーポンを発行したら店の将来がどうなるか分かりそうなものなのだが、それが想像できない店主って結構いるってことはミジンコは恐らくこの日本で誰よりも分かっている。ここまで言うと大袈裟に聞こえるかもしれないが十数年に渡って無償、正確にはこちらが実費を出して労働力、そうデザイン代だろうと印刷機のコストだろうとこちらの自腹で、正確には数えちゃいないが日米で約70社(店舗数にしたら100店超)のありとあらゆるモノを提供してきた。これ自分でも嘘みたいな話だと思うが本当の話。それにはある考えがあってのこと。要は経営が苦しい店の起死回生の方法は業者に頼ることではないというのがミジンコの結論。これは後で説明する。
グルーポンのような共同クーポン購入サイトの言葉巧みな営業トークに魅力を感じてしまう店主たちがいるのは本当に分かる。苦しい店ほどそういう夢のような集客マジック、まぁ、実態は魔法でもなんでもなく危険なトリガーなのだが「これやったら店の起死回生になるのでは?」とは思ってしまうのだろう。本当にそんな風に安易に考える店主をごまんと見てきた。
先日、ちょうどNHKのドキュメンタリーでグルーポンを追跡取材していて、グルーポンが営業をしているところまでVTRをまわしていた。今のこの状況で、この取材を了承したグルーポンには敬意を表したいのだが、ミジンコとしてはその営業トークの詳細を知ってしまったが故に、やはりグルーポンは支持できないという気持ちが強まった。
あるアイスクリーム店が3万円のコストをかけてフライヤー(チラシ)を配布したところ20名の集客があったとのこと。3万円で何枚のフライヤーを配布したのかは定かではないが1回の企画で20名の集客はミジンコとしては実は大成功。その店主もグルーポンの営業の女性も「失敗」とは表現していなかったが「グルーポンの方が効果的」という判断だったようだ。
ミジンコ、まぁ、こう言ってはなんだが本当にこういうことの経験は日本屈指だと思うのだが、3万円程度のフライヤー配布で20名も集客とは驚いたのだ・・・・皆さん、少ないと思いますかね?
よく「センミツ」という表現が使われる。ご存知の方も多い表現だろう。どんなものでも1000枚配布すると3枚くらいは反響があるという意味。詐欺なんかですらこの位の確率を狙うとかなんとか、酷い話だけれど。まぁ、街でよく受け取るコンタクトレンズ店のチラシとか、ティッシュ広告なんかはまさに「センミツ」を実践しているということ。
1000枚配って3人の集客ならば採算が合うということ。
ましてやこのアイスクリーム店、3万円で20名の集客。20名が段々と目減りしていくとはいえ、毎週とは言わないが毎月、いや数ヶ月に1回くらいは来てくれるお客様を獲得したことになる。お一人様が500円を1ヶ月にご利用していただいたとして、なんと1ヶ月目で1万円の売上。そこから段々と来なくなるお客様がいるとはいえ、大まかにシュミレーションしても半年もかからないで3万円の広告費に見合うくらいの売上が上がっていることになる。
対してグルーポンなどの共同購入クーポン。取材では店側がアイスが半額となるクーポン1枚につき確か60円の赤字。クーポンを700枚発行して42,000円の赤字だが“確実に来店するお客様を700名獲得”とのこと。そうグルーポンの営業は述べていた。店主も納得して契約にサインしていた。勿論クーポン発行枚数に応じてグルーポンは手数料を徴収する。これは事業なのだから当然だ。
さて、ここでこういう広告のプロ(←謙遜はしない。すると他のプロたちに失礼なので)のミジンコはどう捉えたのか。
はっきり言えば、そのアイスクリーム店は店に通える範囲にお住まいの潜在顧客を“半額でしか来店しないお客様”としてしまった。それも700名もだ。店がクーポン発行のたびに赤字になろうがお客様には関係のないことだ。「一度半額をやった店ならば次に半額をやるまでは通わない」と考える人は店が考える以上に多い。本当に多いのだ。
「店を知ってもらうため」とするならばクーポンで来店したお客様たちが「感動するほど」のサービスや商品を提供しなければ先ず次のチャンスはないのだが、その「感動」を提供することがいかに難しいことか店側は客の立場になって考えない場合が多いのだ。自分たちだってそうは感動しないくせにだ。
でもって、先に挙げた「なんでミジンコが無償で店にフライヤーなどを提供するのか?」ということ。要はフライヤー、ましてや割引券なんぞを出している時点で「店」、「広告業者(印刷業者)」、「お客様」の3者全員がwin-win-winの関係になることなんぞ絶対にないから。
勿論、広告業者は「それがある」と言い張る。契約を取りたいからだ。無い!そんなものは!
広告業者は確実に儲かる。共同購入クーポンサイトなんかも勿論そうだ。契約が成立した時点で、その後の店が儲かろうが潰れようが収入があるのは先払いでお金を貰った業者だ。
お客様たちにはなんの非もないのだから「得だけしてもらえばいい」はずなのだ。なのでクーポンを購入したのに酷いサービス、ましてやお客が入りきらずにクーポンを期限内に使えないなんて事態は言語道断だ。
そして店側。もう店側は割引を決断した時点で「(インパクトは薄いが)割引をしても黒字になる程度の割引き」とするか「赤字だろうが最高のサービスにして“もう一度のご来店”や“クチコミ”に期待する」これしかないのだ。
そう店が泣くしかないのだ。ずっと泣けと言っているわけではなくて泣いた後に笑えということ。ちゃんと数多くの選択肢の中から割引券をご持参くださったお客様に誠実に対応して次につなげということ。そういう店が強いのだから。
ただし、割引券の製作をプロのデザイナー(業者)に頼み、更に工賃、印刷コストなどを負担がきっついのだ。これも現実。大手チェーンは何十万単位で発注するのでフライヤー1枚あたりコストを(それでも痛いが)軽減できるのだが個人経営店の数百枚から数千枚程度の発注では値引き率も雀の涙。個人で印刷?そりゃもっとかかる。台紙も高いがインクはもっと高い。市販のプリンターのインクの無くなり具合ったら驚愕のスピードだ。エプソン、このやろう!キャノン、このやろう!(*個人的な恨みです。本当は素晴らしいプリンターメーカーたちです。)
要は、win-win-winが不可能なのだけれど、そこに行動原理が不明な異物としてミジンコが加わるとwin-win-win-lose(ミジンコ)とはなるけれど、ミジンコはそのloseが余り痛くもないということ。でもって、win-win-winが成り立っている内に大抵の店は飛び立っていくという寸法。そりゃそうだ。業者に血を吸い尽される前に「集客のために更に赤字を重ねる」という負の連鎖を断てるのだから。業者は店の将来なんぞはお構いなしに店に残されたお金、時には店が借金をして工面したお金を吸い、効果があるどころか店にとっては将来の禍根になるようなことまで提案する。受ける店も店なのだが、本当にそういう店が多いのだ。なんというか宗教と似ている。辛いときほど騙されやすい。
さて今とても困っている。
実はミジンコと店側だけが赤字を出しているはずの割引券の信憑性が非常に低下しているのだ。「割引=怪しい」となってしまったので。
もうなんでもかんでもグルーポンのように見られてしまう。本当はコストもかかっているし、店側も通常料金から値引きしている割引券を無料で配布したところで「あ・や・し・い」と見られる。実際、店にはなにを言っても良いと勘違いしたモンスター客たちは「割引の更に割引」を請求するなんて事例が増えた。今、そんな世の中なのだ。
本来は店の経営が安定するための「たたき台」として機能させるはずの配っている時点で店もミジンコも痛い割引券が“共同購入”なんてとんでもないシステムのクーポンと同一視され始めている。そんなアホな!とは思うが、そう思う消費者心理も分からなくもない。まぁ、ひとつ怪しければ全部怪しく見えるものだ。
まったくグルーポンのせいでとんだとばっちりだ。
もう何百回と同じ質問されているので答えるのも面倒になってきたが「なんでお店や会社を助けるの?」と訊かれるが、大抵いつも同じ答えをしている。
多摩川に傷ついて溺れているアザラシがいたとして、かわいそうと思う人は沢山いる。「誰か助けてあげて!」と誰かに期待する人も沢山いる。当然のことながら他人事なので干渉しない人もいる。別に悪いことではない。アザラシが食べもしないエサを川に投げ入れて水質汚染を進める馬鹿もいる(責任もリスクも取らないのに店にアドバイスだけしてくる店主の家族、友人、知人、自称常連客のなんと多いことか!みんなドのつく素人のくせに!)。
俺はアザラシと目が合って“しまったら”、アザラシがその多摩川のヌシになって、勝手な解釈でアザラシをかわいそうな生き物扱いしていた見物客から見物料のアジやイワシ(最近高いよ!)を貢いででも「見せてください!(店に入れてください!)」となる状況を作るのが楽しいと思う。と答えている。その痛快な世界が生み出せるのならばこずかいが少し減ったところでやる価値はあるのさ。
[17回]
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