アン・ハサウェイのデビューであり主演作の「プリティー・プリンセス」という映画を観る前から大嫌いだった。邦題や日本でのマーケティングからして「ローマの休日」と「プリティー・ウーマン」をイメージさせていて、その2つの名作に乗っかろうという姿勢がまずイヤな感じがしたし、そもそもオーディションでいきなり主演デビューを飾ったとかいうアン・ハサウェイの顔が魚か爬虫類に見えて、「どこがオードリー・ヘップバーンの再来だ!」とその大袈裟な宣伝文句にアッタマきた。
そういうわけでずっとアン・ハサウェイが出演している映画は避けていた。一番好きな監督であるアン・リー監督の「ブロークバック・マウンテン」にアン・ハサウェイが出ていたのだが映画館では気がつかなかった。数年後に出ているのを知ったくらいだ。「ライフ・オブ・パイ」でオスカーを受賞したアン・リー監督、台湾時代の同監督の作品は「ライフ・オブ・パイ」よりも監督賞モノの作品ばかりだ。巨匠と呼ばれているハリウッドの監督たちよりも知名度も扱われ方も不遇な感じがする監督だが「ハルク」以外はハズレがない。アン・リー監督に「ハルク」を任せたハリウッドのプロデューサーと映画会社の感性って・・・・・。
アン・ハサウェイ主演の「レイチェルの結婚」を機内でたまたま観て驚いた。監督がジョナサン・デミ(「羊たちの沈黙」の監督)だということも驚いたが主演の女優の演技にたまげた。なんだこの上手い女優は!?と心底驚いた。それが既に主演作が沢山あるアン・ハサウェイだとエンディング・クレジットで知った。後日、とっくにDVDになっていた彼女の代表作とも言える「プラダを着た悪魔」を観た。面白かった。主演の力で作品が名作へと昇華しているハリウッドでは希有な作品だ。焦って「プリティー・プリンセス」と「プリティー・プリンセス2」のDVDを購入。この2作については日本でのマーケティングが最低だったのだと分かった。作品の作り手側はまったく「ローマの休日」を意識していないように見えた。主人公は小国のお姫様だと判明するアメリカの女子高生という設定ではあるのだが「ローマの休日」にかすってもいない完全なオリジナル作品だった。しかも「2」までちゃんと作られていて面白い。
オードリー・ヘップバーンには誰も辿り着けないとは思うが、同じ頂上ではなくともアン・ハサウェイは頂に向かって登り続けている女優だ。ずっと役者として演技を磨いていることが伺えるところに好感を持っている。売れて億万長者になった途端に演技への情熱が希薄になっていることがスクリーンから伝わってくる多くのハリウッド女優たちとは一線を画している。
[17回]
PR