小保方さんの記者会見を生放送でだいぶ見た。会社が気を遣ってくれてその時間の2時間をオフにあてがってくれたのだ。細胞(小保方さん)と量子力学(ミジンコ)では分野が異なるがブレイクスルー(技術革新)を目指している者として研究者の節度の問題としてSTAP細胞の一連の疑惑については注目していた。会見は2時間半以上あったらしく最初と最後の一部を見逃したが会見のほとんどを視聴できた。先に感想を言うと会見からは小保方さんと小保方さんの両脇に陣取っていた弁護士2名からは真相を明らかにしようとする意思は感じられなかった。
「STAP細胞はあります。」と小保方さんは断言していた。こう言ってはなんだが小保方さんのそういう意見は別に関係ないのだ。提示するべきことは研究者の発言ではなくて証明だ。研究者が「ある」と言ってもそれを証明できていない場合はそれは科学の上ではまだ「存在していない」なのだ。百歩譲ってあるかもしれない、もしくはある可能性が高いからこそ研究者たちは実験を繰り返してその証明に人生を費やす。その研究に投資する機関、これはミジンコの立場にあたるが「あるかもしれない」という研究者の発想を信じて莫大な予算を「ないかもしれない」のに投資するのだ。そう研究投資とは「ある」ことも証明することも大事なのだが「ない」こと、もしくは現代科学ではまだ「ある」とは言えないことへの投資は今は時期尚早だという考えに至る為の行為でもある。これは言葉によっては「諦め」とも言えるのだが、例えば今の時点で研究開発費に100京円、実験成功までに1000年かかる技術への投資を始めないという選択は賢明なことなのだ。この予算100京円、1000年という期間が100年後の既に実用化されている発明の数々やDNAコンピューターをも凌駕するようなコンピューターの登場によって、同じ研究開発が10億円・10年の期間で可能となるやもしれないのだから、それを未来の研究機関に託すという判断はそれほど間違ってはいない。
細胞にストレスを与えることによって万能細胞へと変質するという技術自体は本当に存在するのかもしれない。小保方さんは既にあると主張しているわけだがその証明は一向に出てこない。今回の記者会見で小保方さんも小保方さんの弁護士たちも認めようとはしないのだろうが既にSTAP細胞の発明者としての権利を小保方さんは喪失した。これは科学の常識中の常識だ。そういう技術があるかもしれないと主張した人が発明者ではない。実験を成功させて世界に一番早く発表した人が発明者だ。つまり現時点ではここをご覧の皆さんが「ストレスを与えることによって活性化した細胞が万能細胞に変化する」と発表したとして、科学の上での立場は小保方さんと同じ位置にいることになる。発明は言ったもの勝ちじゃない。実証しなければそれは無いものと同じだ。
ドラえもんが四次元ポケットから出すアイテムの数々はいつか実現するかもしれない。ワープ航法もかつては宇宙に存在するエネルギーよりも多くのエネルギーを必要とする為に不可能だと言われていたが今はその説よりも可能性としては「できるかもしれない」に傾いている。勿論、今すぐには無理だ。あくまでも未来の研究者が実現するかもしれないと言った話に過ぎない。今、誰かが「ワープできる!」と言ったところでその人はワープ航法の発明者にはならない。小保方さんは自覚しているのだろうか?小保方さんの今のポジションはSTAP細胞があると言っている人に過ぎないということを。研究者ならばその証明をしなければならない。
200回も成功しているというSTAP細胞を生み出す実験に参加した他の研究者たちの氏名は「個人名は明かせない」とし、理研内でのインディペンデント(小保方さんとは別チームとして)の実験成功者の個人名も明かせないという。海外の実験成功者の氏名も明かせないらしい。実験のコツとやらがあるらしいのだがそれも公には明かせないとのこと。小保方さんは実験のコツを知らないままに追試をしている世界中の研究者たちの労力と時間を無駄にしている。
実のところ諦めが悪いようだが当ブログの管理人であるミジンコはSTAP細胞という名前ではなくて構わないが万能的に変化する細胞自体は存在していて欲しいと願っている。iPS細胞は再生医療の未来を切り開くと思うがまだまだ克服するべき壁は高く実用化までに間に合わない人々がいることは否めない。STAP細胞のような細胞が本当に存在するというのであればこれほどの朗報はない。しかもiPSとSTAP細胞のような細胞は両立する。どちらかひとつを選ぶといった技術ではなくて両方が再生医療を支える根幹となり得る。根幹がひとつでも二つでも五つでも大歓迎だ。
これも諦めが悪いようだがSTAP細胞が無くともSTAP細胞のコンセプトのように細胞になんらかの刺激を与えて万能細胞に変化させるという技術自体は可能性として「ある」と思う。ストレスを与えることによって変化する動植物は自然界に数多くいてそれは人類が万能細胞を作るためのヒントを与え続けているような気がしてならないのだ。落雷があってこそ菌類は生存本能を働かせて活発になる。山火事が起きないと種を飛ばして繁殖できない植物もある。細胞レベルでも事故が起きないと変化しないなんていうひねくれ者の細胞がいないとも限らない。
兎にも角にも、小保方さんの記者会見での言葉の数々は残念だ。研究者としてそれらの発言がいかにおかしいのかを自覚していなさそうなその姿は見るに堪えないものがあった。理研はこれから一年かけて検証作業に入る。つまり、これからの1年間、誰も「STAP細胞が存在しない」とは言い切れないのだ。まだ「あるかもしれない」のだからこそ検証するのだ。「ないかもしれない」とは言えるが「ない」ことへの証明はまだ誰もできない。それは前述のワープ航法と同じだ。「ワープ航法はある」と言った者がいてもそれを「ない」と完全に否定するにも無いことの証明ができない。だからといってその「ある」と言った人がワープ航法の発明者となることはないことも前述のとおりだ。小保方さんの万能細胞についての立ち位置と変わりがない。
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