ヒゲが奥さんやお店の常連さんたちと逗子海岸に行くというので身分の差もわきまえずに俺様を誘ってきた。「行かん!」と率直かつ丁寧に断った。
勝手にズケズケと我が家の居間に侵入してソファーで落ち着くヒゲ一匹。イヌたちにガブガブ攻撃するように指示すると本当に攻撃するのが笑える。そこまで躾けるのに2年を要したが今や完璧なデキとなった。「やーーーめーーーてーーー!」とヒゲも大喜び。
キパ子がすぐにヒゲの買収に乗っていた。イカ焼き1本であっさりと海に行くことを快諾する我が娘。安い。安過ぎるぜ。ミジ妻は「日焼けさせる気か!」とヒゲが涙目になるほど怖い顔で怒っていた。
ヒゲが素直に運転手が1人足りないとミジンコにすがってくるまで15分ほど。今回はいつもよりも粘った方だ。免許持っている人たちは多いが世田谷から逗子までスムーズに事故なく運転しそうな人がヒゲとミジンコしかいないという恐るべきペーパードライバー率。クルマ2台で分乗していくとして確実にドライバーは2名必要なのだ。
ヒゲの方のクルマにミジ妻も乗車。結局行くんかい!とは怖くてつっこめなかった。そもそもこっちのクルマには乗らないというのはどうなのよ!とかいうつっこみも怖くてできなかった。夏には怖い話が似合う。ヒゲのステーションワゴンをぶつける気で発車。自分の運転の上手さが憎い。どこにもぶつけられない。ルームミラーで車内の後方にヲタモデルらしき生物を発見したが、とりあえず話しかけると面倒くさいので無視していたら「無視すんなーぎゃーーーーっ!!!」とか後ろで叫んでいた。普通にうるさかった。
静かになったと評判の逗子海岸に到着。ミジ妻の場合はまさに近所のようなもので特に感慨は無いようだが他のメンバーにしてみれば「海だーーーっ!!!」ということで大の大人たちが大ハシャギ。ミジンコは近所のカレー屋でお食事。別に車内でみんないろんなもん食べていたときに運転中のミジンコに恵んでくれなかったことを怒っているわけではない。プンスカー!!!ミジ妻も店に来てタバコをブハーーッと吸っていた。その店はミジ妻と結婚前からよく行っており、十数年前から「いつか逗子に引っ越す」と言いつつ今もって東京にいる我々は店から信用ないのである、あっはっはー。
逗子海岸のいわゆる静音化には賛否両論あるがミジンコとしては大賛成だ。今回、本当に静かな海岸を楽しめた。ミジンコの場合は極端なのだろうが、サザンオールスターズなど夏の唄の全てに特に思い入れもないものだからスピーカーから延々と日本の歌謡曲が流れる浜辺は正直辛かった。それにあの騒音めいた音量は溺れたりした人がいたときにライフセーバーに伝えるまでに時間がかかるのではないかと以前から疑問だった。とはいえ、ほとんどビーチに行かない自分がとやかく言うのもなんだなという思いもあった。そんなビーチから遠ざかっていた自分でさえ、こんなに快適ならばビーチも悪くないなと思わせる健全さを感じた。逗子海岸に関してはこの夏は利用者が激減したそうだがそれが逗子市と海岸付近の住民の方々の選択なのだから支持したい。騒音もなし、ナンパもなし、刺青もなし、そういうビーチを好んで行く人たちだっているのだから、逗子の選択は長い目で見ると賢明な選択かもしれない。海の家という商売は地域社会との共生だとは思うのだが、商売する側がそれができなかった以上、海岸の保全も含めた税を納めている逗子の人々の選択は理解できる。
キパ子は逗子海岸ではもはやナンパ行為などは先ず行われないということを知らなかったようだ。それを浜辺についてから悟り、そして殺気を漂わせながら痩せたトドのように寝転がるキパ子一頭。お父さん、怖いので近寄れなかったよ。
チャンチャン。
[17回]
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