もう日本でもご存知の方々も多いであろう『筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者、ピート・フレイツ氏が始めた「Ice Bucket Challenge(氷水バケツチャレンジ)」というSNSと動画投稿ツールを利用したチャリティーキャンペーン』について。
著名人たちがバケツにたっぷり入った氷水を頭からかぶる様子をネット動画で公開し、その際に次の同じチャレンジをやって欲しい3人の名前を挙げる。その指名された3人は24時間以内に氷水をかぶる動画を公開してまた3名を指名するか、もしくはALS AssociationというALS患者支援の為の基金に100ドルを寄付するというルール。その両方を選んでも勿論OKだ。間違いなく資産家たちである挑戦者たちは100ドルを払うことは容易いのではあろうが、そういったいわばセレブリティーたちが氷水を浴びるという動画は珍しくもあり話題にもなっているのだから、本来の趣旨としての「ALSという難病のことを広く認知してもらい支援(寄付)を募る」という目的を果たしている。7/29に開始されたこのキャンペーンが既に十数億円もの寄付を集めているということは、先ず間違いなく氷水を浴びてくれた著名人たちのおかげだろう。
例えばこの映画「ソーシャルネットワーク」でクソヤロウに描かれたものの、実は結構イイヲタクである彼、facebookのマーク・ザッカーバーグCEOの氷水かぶり。おい!氷が足りねーじゃねぇか!とか突っ込んではいけない。彼なりに精一杯にやったのだ。どうも自宅の庭で撮影したらしい。世間からは億万長者扱いされているが質素倹約に努めている為、シリコンバレーの一画にある日本円で5,000万円ほどの家に奥さんと住んでいる。警備とか大丈夫か?と思うがそれでもfacebookが成功してからもロフトアパートに住んでいたりしたので、これでも彼には豪華な暮らし。庭に雑草とか生え放題に見えるかもしれないが、それもカリフォルニアの温暖な気候では致し方がない。そもそもは砂漠だったところを街にしているのだから太陽光線がハンパなし。草がよく伸びる。雨も滅多に降らない上にこの夏は非常事態宣言が出るほどの水不足だ。そんな水不足なところで水を無駄使いしたら罰金があったはずなのだがこの動画については問題が無い。なぜなら彼にとってはこれがシャワーなのだ。カリフォルニア州がいくら水不足でも風呂までは禁止されていない。三日で草がボーボー伸びる土地なのだ。庭師もお手上げだ。だから庭の石畳の隙間にビッシリと生えている草は見なかったことにして欲しい。しつこいようだが氷が入っていない氷水なところも撮影準備している最中に暑さで氷が溶けてしまったのだと許してあげるべきだ。そもそも家に冷蔵庫が無かったので氷は作れなかったのかもしれない。だから今回は氷がないけれど許すべきだ。ともかく重要な点は、facebookのCEOでさえも快くこのチャリティーイベントに参加しているということだ。
超が付くような(本人たちはこの呼ばれ方を嫌うだろうが)セレブリティーたちだからこそ、氷水を浴びるという行為が話題になるのだ。セレブたちが社会貢献に時間とエネルギーを割くことは義務のようなものであることを彼等は深く理解している。社会があってこその自分たちの今の成功であり、成功後は自分たちの力を社会に還元することを彼等は望んで行っている。そういうセレブたちの考え方の背景があるからこそ、このチャリティー・イベントは大成功しているのだろう。超有名人たちが多忙な中、こんなおふざけをやるということが話題になり、しかも次に氷水を浴びることになる3人を指名するのだ。注目されない方がおかしいくらいの企画だ。そう、いわば売名だとか、今更話題になる必要がないくらいの成功者たちがやってこそ、「自己PRへの必死さが無い」ことや「チャリティーらしく基金の知名度を上げること以外は特に他意はない」ことが大事なのだ。
しつこくて申し訳ないが超有名人たちがやっているからこそ話題になったのだ。彼等の立場故に次に指名する人々、つまり次の超有名人たちに友人・知人も含まれるであろうが、自分たちが面識がなくともお互いに有名なので名前を知っている人々を指名することが面白くもあり意味もあったのだ。例えば、上の動画のマーク・ザッカーバーグCEOは、ニュージャージー州知事のクリス・クリスティ知事から指名されている。有名知事が世界的ネット企業のCEOを突然指名したのだ。そして今度はそのマーク・ザッカーバーグCEOは、米Microsoftのビル・ゲイツ氏、Facebookのシェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)、米Netflixのリード・ヘイスティングスCEOの3人を指名した。この3人とも、今更話題になったところでその知名度に変化なんぞ生じないほどの有名人たちだ。氷水を浴びれば好感度は上がるのかもしれないが、それがどうしたの?といった立場の人間たちということだ。だからこそ彼等が氷水を浴びることが注目されるのだ。ビル・ゲイツ氏に関しては説明不要だろう。シェリル・サンドバーグCOOは女性取締役としては世界で最も有名な存在といっても過言ではない存在だ。女性の地位向上に関して世界で講演を行っており、著書は日本でもベストセラーだ。リード・ヘイスティング氏は動画配信に於いて世界をリードする存在だ。マーク・ザッカーバーグCEOは、水をかぶりそうにない3人をわざわざ選んでいるということだ。そんな水をかぶりそうもない人々を指名した方がALSチャリティーは注目されるのだから、敢えて「え?この人を指名しちゃうの?」ということをやっている。そこが大事なのだ。なにしろ基金が注目されてナンボなのだから。本来は、microsoft社との競争も含めた微妙な関係を考えれば、さすがにビル・ゲイツ氏は指名しない。強い信頼関係があるとは言うものの、マーク・ザッカーバーグCEOと余りにも有名になり過ぎたCOO(ナンバー2)とは、なにがあってもマスコミの餌食にされるというのに、氷水ぶっかけにそのナンバー2を指名したのだ。むしろマスコミよりもシリコンバレーの人々がちょっとひいた(苦笑)Netflixに関しては単純に好きな会社だったのだとは思う。確かに同社のおかげで動画視聴が凄く便利になった。たぶん、マークザッカーバーグCEOもユーザーなのだろう。
上記のように超有名人たちが超有名人たちを指名するからこそ注目されるのだ。指名されて自分が注目されることを喜ぶような次元にはいない人々が「忙しいけれど、やればいいんでしょ!やれば!」というノリでやるからこそ微笑ましくもあり支持を集めているのだ。
さて、ここまで説明してやっと今回述べたいことを述べる。日本でも最近このチャリティーの氷水浴びを実行する著名人たちが増えてきたわけだが、どうにも日本では妙な流れになりつつあるようで苦笑いしている。ソフトバンクの孫社長は見事に氷水をかぶったものの、次の挑戦者にグループ会社の社長3人を指名。う~ん、なんだかなぁと思った。芸能関係にもこのチャリティーのバトンはまわっているようだが、注目されたくて仕方がないという感じで大喜び感が出てしまっている人もいて、これまた、なんだかなぁと。例えるならば、ドッキリ番組に引っ掛けられる芸能人たちといった感じで騙されたとしてもテレビ番組に出られることを喜ぶ人たちのようだ。どうにも日本の場合は、指名するべき人たちはその人たちじゃないでしょ!という印象が否めない。つまりチャリティーに文句をつけるのもなんなのだが「白ける」ということだ。いわば企画自体はチェーンメールと大して変りはしない。但し、それが100ドルどころかもっと高額の寄付をしても揺るがない資産を有していたり、わざわざ注目を浴びる必要がない人々がやるからこそ、イヤな感じがしないキャンペーンだったのだ。氷水をかぶりたくって仕方がない人々、つまり注目されてナンボの人々がやっても白けムードが漂うばかりということだ。このままだとこのALSチャレンジ・キャンペーンの日本人版は、注目を浴びたい人々の互助会のようになってしまうことだろう。芸能事務所や広告代理店が動き出したりしたらまさに絶望的だ。映画公開が迫ったときだけ露出が増える俳優・女優たちみたいな感じで、なにかを宣伝したい人が氷水をかぶるようになったりして・・・・。それはもうチャリティーとは別の宣伝活動だ。
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