最近、邦人が拘束されたことにより少なからずの注目を集めているシリア。あの邦人のまるで自分から拉致されに行ったかのような未熟な行動については言いたいことは山ほどあるが、今は無事の帰国を祈ることが同じ日本人としての節度ある態度なのだろう。まだシリアの現実を彼が知る前とはいえ、彼の数々の過去の軽率な言動にはここ数年同じくシリアに足繁く赴いた身としては憤っているなんてものでは例えられないほどの怒りを覚えている。
既に3,300万再生以上のとても有名な動画だ。人道支援NGO団体・Save the Childrenが発表したこの動画は、シリアの内戦勃発前後の少女の日常の激変を描いている。冒頭の数日間はあんなに笑顔だった少女は飢え、銃弾や爆撃の恐怖に震え、父親とは生き別れる。そして少女は人形のように無表情になる。感情を無にしないことには戦場では気が狂うからだ。
世界中の人々がこの少女のような犠牲者を出さない為にアサド政権側と反政府側勢力にも圧力をかけるため奮闘している。恐らく日本ではシリアのイメージがこの動画のようなものでない人々も少なく無かったことだろう。中東や北アフリカのイメージというよりもヨーロッパの国のような整備された街並みは今のニュース映像で流れる廃墟ばかりの映像とはだいぶ異なるのではないだろうか?元々はシリアは美しい国だったのだ。
動画の最後で「ここで起きていないことが他では起きていないとは限らない」というメッセージが表示される。世界のどこかでは戦争が起きているという意味だ。動画の少女は父親とは生き別れたものの、母親とは難民キャンプで誕生日を迎える。彼女の後ろのナイロンシートは大型テントのそれだ。1年前の大勢の家族に囲まれての誕生日とは余りにもかけ離れた誕生日だ。母親ももう化粧をしていない。化粧品は手に入らない世界だ。
勿論、余裕があれば寄付も選択肢のひとつだろう。しかしながら、日本人の場合は日本で普通に暮らしているだけでも世界に貢献している。日本のような経済的にも技術力でも世界屈指の強国の場合、国の発言力を維持すること、つまり存在感の強い国でいればいるほど世界への発言力が維持できる。アサド政権を支持するロシアへもシリアの反政府勢力を支援している西側とも一線を画す、真に平和を追求する国として存在感を示すことができる国は世界でも最も日本が適任だ。その為にも日本は引き続き経済的に強く、世界が頭を下げてでも欲しい技術を次々と生み出す技術立国としてのプレゼンスを示していかなければならない。なにより核兵器を2発も使用され、首都に甚大な被害を受けた空襲に耐えながらも戦後僅かな期間で世界屈指の経済大国となった日本は多くの国にとっては希望なのだ。中東やアフリカなどで内戦などで混迷を極めた後でやっと復興の足掛かりを掴んだ国々では、まさに日本は見本なのだ。敗戦国、しかもアメリカ(正確には連合国)を相手にしてボロボロに敗れ去り、国土が焦土と化したというのに復興してそのアメリカに最も迫るGDPを半世紀以上も維持している国は他の国々からしてみればまるで奇跡なのだ。その日本の強さの理由は1にも2にも勤勉な国民性だ。
世界中で戦争も紛争も絶えないが、日本のことを知れば知るほど、どこの国の人々でも戦争なんて馬鹿馬鹿しくてやっていられなくなることだろう。戦争をする暇と血があるのならば、それを経済活動に使い、世の中を便利にする技術開発に注力した方がよほど有意義だ。秋葉原や原宿の文化は世界的にも人気がある。人気があるというよりかは余りにもエキセントリックなのでイヤでも気になってしまうといった方が正しいだろうか。戦争をしないでアニメを見て変なコスプレをして膨大な数のツイートを送信する。そんな世界的にはわけがわからない社会の方が結局は紛争地帯よりもよほど人々が幸せなのだ。あっはっはー!日本人で良かった!
余談だが、ここのところ日本でも知名度が上がったシリアのアレッポという都市。今は崩れ去った建物ばかりの激戦地なので旅行に行くことなど言語道断な場所ではあるのだが元々はとても美しい街だった。アレッポの人々にスマホで終戦直後の東京・横浜などの写真を見せた後に今の東京や横浜みなとみらいの写真を見せると「欧米か!」とつっこみたくなるほど「ワーオーッ!」というリアクションだった。今の日本の姿は「復興は必ずできる」ということの証明なのだ。日本が日本らしく頑張っているだけで紛争地帯を含めた世界に希望を与えている。
[55回]
PR