ロシアのプーチン大統領が3時間余りの長時間の記者会見を開いた。ロシアの通貨であるルーブル暴落に関連した今後の経済対策などを語るための会見ではあったが、ルーブルの急激な下落は「外的要因である」と強調していた。その表情は憔悴し切っており会見はルーブル下落阻止には明らかに逆効果だった。実際にプーチン大統領の会見後にルーブルは更に下落、この僅かな期間でルーブルの価値は半分となった。
原油価格の急落もロシア経済には大きな痛手だ。ルーブル暴落の原因のひとつとして原油価格の急速な下落がある。原油輸出国のロシア経済が不安定となり結果としてルーブルの信頼性も落ちた。
確かにロシアは経済制裁を受けている最中だがそれがここまでのルーブル暴落を招いているとは思えない。それならば夏にとっくにルーブルは今の価値にまで下がったことだろう。プーチン大統領がなんと言おうともロシアという国自体の信用が地に落ちたのだ。だからこそ、その国の通貨の信用が失墜し価値が下がり続けているのだ。世界で何か不穏な動きがある度に買われる日本円とは大違いだ。国の信用度のバロメーターとも言える通貨の動きは正直なものだ。この21世紀にもなってまだ侵略戦争を肯定して国際社会から非難されても開き直るような国家との取引を躊躇する国や企業の方が世界では多いということだ。そんな国に進出するリスクを負う外国企業はそうはない。だからその国の経済が低迷し通貨の暴落を招いた。
もはやロシア人たちは輸入製品、例えばiPhoneを買うためには1ヶ月前の2倍の支出となった・・・が今は状況がもっと悲惨だ。現在、アップル社はロシアでのiPhone販売を停止して価格調整に入った模様。海外企業がロシアで製品を販売するにも1ヶ月前の価格設定では大赤字となってしまうのだ。それほどまでにルーブルの価値が下がった。今後、ロシアでの輸入品はどれ程の値上がりを見せるのか、今もってルーブルは下落中であり、もはやロシア人にとっては輸入品は超高額商品となった。
このロシアの恐慌とも言える近況は世界にとって見れば良い教訓だろう。イラクのように侵略国家の政権が打倒されないまでも、ロシアのように結局は国の経済が立ち行かなくなる、即ち経済的な死を迎えるということだ。ウクライナの国土に侵攻した国になんの制裁もないというのではなんの為の国連かと憤っていたが、通貨暴落というかたちでロシアは今や世界に助けを求めなければならない状況に陥っている。戦争をやりたかろうがお金が無ければできない。
アメリカとキューバの関係が改善する兆しが見えてきて尚更のことロシアには厳しい状況だ。今や数少なくなったロシアの友人たちが一人また一人と消えて行っている。アメリカもいやらしいタイミングでキューバに国交正常化を打診したものだとは思うが、アメリカにはそういうカードがいくつも控えていると分かった上で自信過剰なロシアはアメリカを挑発し続けた。なんでもかんでもアメリカが正しいとは思わないが、アメリカを挑発しながら国民を虐げていた独裁者たちは総じて打倒されている今の世界は、まぁ、アメリカにとってもそうであろうがむしろその独裁者のいる国の人々にとっての未来が開けているというものだ。フセインにしろカダフィにしろ、国民を殺すことを厭わなかった。
政府や大統領を批判したジャーナリストが次々と他殺体で見つかり、他国(ウクライナ)に軍隊を送っているというのにそれを認めず彼等はその国の人々が勝手に創設した自警団などとふざけたことをぬかす政府が国民にとって最適なものとは到底考えられない。マレーシア航空機撃墜の犠牲者たちがその後の開き直ったロシアの態度を許せるだろうか?欧米諸国を牽制する為に数々の独裁政権を裏で支援してはその国でどれだけ虐殺が起きようとも関知せず、あろうことかそういった独裁国家への国連制裁すらも常任理事国の強権を発動して事あるごとに妨害してきたロシア。ルーブル暴落は起こるべくして起こったことだ。
恐らくほとんど味方のいなくなったロシアは日本になんとかすり寄って来ようとすることだろう。その都度、日本は北方領土返還を要求するべきだ。アメリカなどはロシアと交渉する日本を苦々しく思うことだろうが日本は独立した主権国家だ。アメリカの思惑に沿わなくとも日本に利することを追求することは正当な権利だ。弱り切ったプーチン大統領という今後の状況は日本にとっては悪い状況ではない。日本はロシアにどんどん強気で行くべきだ。なにしろ円はルーブルよりも遥かに強いのだから。
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