だいぶ前の事になるがオウム真理教に所属していた高橋克也被告が長い逃亡の末に逮捕された直後の取調室での供述にて、幹部の指示による犯行として容疑を概ね認めた上で「世間を騒がせてしまったことは間違いないことです。全ては不徳の致すところです。」と述べたことが報道されていた。当時、ミジンコもそうだったのだが、この高橋被告の「不徳の致すところ」に疑問を抱いた方々は少なくなかった。テロ組織に属し、17年もの長きに渡り逃亡を続けた被疑者が「不徳」がどうのと言う立場だろうか?テロに加担したことも、その後も延々と罪を償う意思を見せずに逃亡し続けた17年間で徳を積んでいるわけもなく、不徳の致すところなんて次元のことではない。大量殺人テロに属して犯罪に加担した容疑で17年間も逃げた末に自首するでもなく逮捕されるまで逃げていた男が何をもって不徳だったと考えたのか、その考え方が甘い。多くの人が命を落とし、後遺症に悩まされ、遺族は怒りのぶつけようがないままの17年だったのだ。逃亡犯が逮捕されて不徳の致すところとは余りにも言葉選びがなっていなかった。
維新の党がトカゲの尻尾切り程度にしかなっていない除籍処分とした上西小百合衆院議員も橋下最高顧問も同席した記者会見にて「不徳の致すところ」と謝罪していた。ここでも「不徳の致すところ」の登場だった。どんなに上西小百合衆院議員が言い訳をしようとも聞くだけ虚しいだけだ。衆院本会議を欠席する前後にショーパブに行ったことも、その後の仕事と称する旅行にて秘書の実家に宿泊したことも事実なのだから、上西議員が何を言おうともどういうことなのかは誰だって分かる。むしろ言い訳をしていることが有権者を舐めた態度であることを上西議員もいい加減に学ぶべきだ。この件では不徳もなにもあったものじゃない。国会議員としての数々のあるまじき行為、その後の言動。徳なんか積んでいるわけがない。
日本テレビ・上重聡アナウンサーがABCマート会長からマンション購入のための1億7,000万円無利息借り入れについて「不徳の致すところ」と謝罪していた。これには笑ってしまった。誰かに無理矢理お金を押し付けられたわけでもあるまいし、アナウンサーというよりも一社会人としての常識として取引先(スポンサー企業)の会長から利益供与を受けて良いのかどうか、その判断がつかなかったはずがない。いわばそういうことがおかしいと分かった上でも利益を享受して、それら自己の収入では到底味わえない豪華な生活を満喫しておいて謝罪のときに出てくる言葉が「不徳の致すところ」とはもう笑わせにきているとしか思えない。アナウンサーとは言葉のプロではないのか?1年目の新人でもあるまいし、中堅どころのアナウンサーがこういう言葉選びをすることは他の真面目に技術向上に努めているアナウンサーたちにも迷惑な話だ。他にも自分名義ではないベントレーでの通勤や数々のスポンサー関係者との会食など、次々と問題行動がリークされているアナウンサーは日々研鑽し徳を積む努力をしていただろうか?努力があった上でも努力(徳)が足りずに何らかの問題が発生してしまった場合の謝罪に「不徳の致すところ」を使うものだ。1億7,000万円の無利息借り入れのどこで徳が積めるというのか?単純計算で無利息の30年ローンとして1ヶ月の支払いは約47万2,200円だ。高給な日本テレビアナウンサーとはいえ会社員が毎月支払える金額だろうか?通称・白金タワーの物件も2,000万円は下らないベントレーも「貸す」も「借りる」も贈与税や名義変更なしには通らないほど高額なものだ。ベントレーを運転手ではなくて(借りていると主張しているが)持ち主自ら運転して通勤するという点はギャグとしてはなかなか秀逸だとは思う。そりゃ他の日本テレビ社員たちは唖然としたことだろう。
徳を積んでいる以前の問題のことをしでかした人物が図々しくも「不徳の致すところ」を謝罪の言葉の中に織り込むことに大きな違和感を感じる。確信的にやったことに対して、往生際が悪いということだ。発言者たちのまるで自分はそんなに悪くないけれどと感じつつも、とりあえず謝っておくかといったセコい姿勢が透けて見える。不徳が到ったのではなくて最初から悪いと分かっていても始めて、そして逃げようとしていたことだろうに、なにが不徳の致すところだ。そこで不徳の致すところを使うことは使い方が間違っているし、そもそも図々しい。
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