俺には分かっていた。ヤツから漂う隠しようもない強者のオーラ。戦場ではああいうヤツが一番ヤバいのだ。
映画やドラマに登場するヤクザ役の俳優たちの多くは顔などに疵(キズ)がある。過去の闘い、つまり抗争の時の暴力団なりの勲章のようなものなのかもしれないが結局のところは怪我を負わせられていると言えなくもない。恐ろしいのは暴力の世界で生きてきたのに無傷のヤツだ。相手の攻撃を受けないで相手を倒している可能性が高く、それだけ手練れているということだ。
今回のことがあったから言うわけではない。以前から周囲にはしっかりと伝えていたのだ。「ヤツは相当にやる」と・・・・。そんなミジンコが要注意とするやつらの中でもAクラスで手強いと目されるヤツの凄さを必死に周囲に伝えてきたが誰も信じてくれなかった。話をちゃんと聞いてくれた者さえほとんどおらず、しっかり聞いてくれたのはゴリマッチョ、鬼サップ、ホリフィールドさんというアホばかりだった。でも皆さんもここでピンとこないだろうか?アホとは言うものの、ゴリマッチョたちは生物的には強い部類に入るのだ。今やミジンコのパシリ扱いの3バカトリオではあるが動物として見ると野獣系だ。ちょっとオラついている若造たちでも道を譲るアホモン(アホアホモンスターズの略)たちだ。やったぜ、アホモンげっとだぜ!
そんなアホモンたちやミジンコは野生の勘で認識していたのだ。ヤツは只者ではないと。初めて確認されたのは昭和60年の9月という。「ハ~イ!」とか気さくな感じがするがそれしか喋らないことが一層の怖さを引き立たせている。強い。コイツは絶対に強い。そう感じさせる理由が十二分にあった。
「ハ~イ!」
ヘーベル君である。ご覧いただきたい。寸分の隙もない。宮本武蔵でも斬り込めないことだろう。これこそが本当の強者だ。
ヘーベル君は倒せないというのは実戦経験のある者たちには通じるいわば暗黙の了解だった。そしてその強さが証明された。
流れてくる家まるごとを軽く受け止めてはいなす横綱の風格。少なく見ても8名と犬2頭を激流から守っていた。アメコミヒーロー並みの人命救助だ。
「ハ~イ!」は伊達じゃなかった。
ちなみにポンタやトドクロちゃんも真の実力は隠していると見ている。彼等もヘーベル君と同じ高みにいるが普段はその真の姿を隠してコミカルなキャラを演じていることがバレバレだ。
[19回]
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