応募資格
以下(1)~(4)のすべてにあてはまる方
(1)アル・カーイダ,ISIL,中東,アフリカ,東南アジア等のテロ情勢についての専門的知識・経験をお持ちの方
(2)国内外の大学研究機関へのアクセスがあり,外国語による調査業務が可能(英語の読解力は必須。加えて,その他の言語力(特にアラビア語,仏語,インドネシア語等)もあればなお望ましい。)で,大学院レベル以上(在学中も含む)の方
(3)週3日,東京都内(千代田区霞が関)に通勤可能な地域にお住まいの方
(4)日本国籍を有し,かつ外国籍を有しない方
外務省による非常勤職員の募集(専門分析員(アル・カーイダ,ISIL,中東,アフリカ,東南アジア等のテロ情勢))の募集要項が上記のとおり。これで「週3日、勤務時間:原則として9時30分から18時15分まで」なのだそうな。週3日とはいえ、9:30~18:15までの勤務となると他に本業を持つ方は難しいことだろう。中東問題を専門とする大学教授や研究所職員などを対象にした募集ということなのだろうか?ここまでの応募資格を満たしていて週3の非常勤職を求める人は相当に少ないことだろう。もっとストレートに言えば、ここまでの有資格者ならば他にいくらでも条件の良いポジションに就ける。
外務省としては今年初めに起きた邦人拉致殺害事件の時に対テロについての情報収集能力の乏しさを露呈してしまっており、なんとか情報収集能力の向上を図りたいのだろうがこんな募集からして「やる気があるのか?」と思わせる。専門家の募集の段階からつまづいているということだ。
この応募条件であると本当に有能な分析官は躊躇するやもしれない。例え「お国の為」という思いはあっても、さすがに人生(キャリア)に支障が出るような選択は難しいことだろう。ましてやこんな応募資格を満たしている優秀な人材が非常勤、つまりいつかは契約が切れる(今回は3か月後に更新あり。最長で2年)という仕事を選ぶだろうか?
さて、応募締め切りは12月11日だ。この募集結果を見て外務省は猛省する必要が出るかもしれない。この応募条件でその待遇では専門家を舐め過ぎだ。これでは「今の中東情勢」は知らないおじいちゃんたちしか応募して来ないんじゃないかと当ブログは見ている。1年でもテロ組織はまったく異質な組織に変貌を遂げる。ISILのリーダーとされるバグダディなんて小心者の小物扱いだったときがあるが、その小心さ故にモスクにまで自動小銃を携帯する姿がむしろ人々の恐怖を煽ったり妙なカリスマ性を持ってしまったりした。そういう未来の脅威を分析できる人物は大学などの研究機関の枠に収まり切らないエキセントリックな人物かもしれない。現にビン・ラディンの居場所を突き止めたCIA職員は分析官としては相当に異端児であり、こう言ってはなんだがまったくセオリーを無視しての分析を行っていた。外務省が今募集するべき人物は変人と言われようとも中東に憑りつかれているような逸材だ。この募集要項でそんな変人がやってくるとは思えない。ぶっちゃけて言えばISILに友達がいるといった人材のほうが有用だろう。
次のテロへの完璧な分析は24時間不眠不休で働いても難しいことだろう。CIAでも退職者続出の激務だ。そんな分析官募集にこの待遇はない。命の危険すらある(ISILの暗殺予定リストに載るかもしれない)仕事が最長2年の期間契約なんて冗談じゃない。せめてここまでの条件を満たした人材には外務官僚と同等の待遇を約束したり、高額の年棒を提示するなりしないことにはいつまで経っても日本のテロ対策は進まない。
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