帰国して最初に見た番組がフジテレビの夜の情報番組だった。その選択をした自分が馬鹿だったのかもしれないがなんでも良いからニュースを見たかったのだ。
番組開始から間もなく、facebookの創業CEOであるマーク・ザッカーバーグ氏の5.5兆円の寄付について、その寄付先についての疑問を取り上げた特集が始まった。簡単にいうとザッカーバーグ氏が自ら立ち上げたLLC(合同会社)に5.5兆円を寄付する為にその使途などの公開義務が生じずに怪しいという内容だった。
フジテレビは本当にアホなのだろうか?
今まで散々寄付を行って来てその都度、色々な問題点を見つけたザッカーバーグ氏は「じゃあ、自分で寄付金を運用しちゃおう!」と考えることの何がいけないことなのか?例えば、寄付した後には自分がまったくタッチできないようでは、その寄付先の基金の理事会の理事たちがファーストクラスで移動しようともその行為の注意さえできない。学校に寄付してみたらその仲介役となったコンサルティング会社に莫大なコンサル料がかかった。国や地方行政に寄付したところでそれが無駄なく正しく運用される保証は得られない。だったら自分のLLCで監視しようと寄付者自身が思い立つことのどこがおかしいというのか?
とにかく酷い番組だった。延々とVTRを流す間、陰鬱なイメージのする音楽を流し、ナレーションまで暗い始末。まるでザッカーバーグ氏がその5.5兆円で何かを企んでいるかのような扱いだった。元々が彼が自分の権利として保有している株式だ。それをどう使おうが彼の勝手だろうに。それでも彼は子供たちがフェアに、つまりチャンスを得られる社会を世界規模でやってやろうとしているのだ。フジテレビよりも遥かに世界貢献をしている。
唯一の救いは厚切りジェイソン氏がちょうど良いタイミングで今晩のゲストだったこと。VTRが終わった後のスタジオで「何が悪いの?」という見解を見せていた。寄付金を財団などが運営する基金に丸投げにすることは簡単だが、それには多少のロスが発生するし、寄付者の意思通りの慈善活動が行われるとは限らない。財団理事をやっている自分はそれは認めざるを得ない。普段はマーク・ザッカーバーグ氏をクソ生意気な若造呼ばわりしている身としては認めたくはないが、彼はとてもとても呆れるほど善人であり賢いのだ。5.5兆円をただ寄付をしてどこかに丸投げするよりも彼が5.5兆円を運用したほうが世界の未来は明るいことだろう。
それとこれもフジテレビは愚かだと思うのだが、株式の知識もなしにこういう番組作りをするのだから呆れ果てる。ザッカーバーグ氏が寄付する部分のfacebook社の株式は氏の都合だけでポイっとどこかに売却して良い類の株式ではないのだ。IPO(株式上場)する前にそれはもう綿密に規定を設けた上で氏の保有数が公開前時点の株主間の協議で決定したのだ。それはもう異例なほど氏への信頼と優遇措置を認めたものだった。他の上場企業のようにトップのすげ替えは想定しないといった異例のIPO前協議であったことは世界的なニュースになっていた。その株式をLLC以外のどこかに譲渡できるわけがないだろうに。そこ、フジテレビのディレクターもプロデューサーも考えなかったのだろうか?LLC以外のところに株式が移動したらfacebookの経営陣が変わってしまう可能性とか考えないで番組構成をしたのだろうか?寄付したら会社も手放さなくちゃいけなくなるならば誰も寄付しなくなってしまうじゃないか。そういうところまで掘り下げてからザッカーバーグ氏の寄付が怪しいという番組を作るべきだ。株式の知識はない。でもザッカーバーグ氏が怪しいでは余りにも番組として無責任だ。そもそも今回の番組の冒頭で映画の「ザ・ソーシャルネットワーク」を取り上げていたのだ。あの映画を取り上げれば説明しやすいと考えたのだろうが、
当ブログで何年も前に説明したように、あの映画はまったく事実とは異なる創作だ。ザッカーバーグ氏本人に取材すらしていない本の映画化というとんでもなく図々しい作風だ。なんだか事実関係の確認一切なしで作られているところが今回のフジテレビの番組と似ている。
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