昨日記事に上げた2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて作成された「&TOKYO」というロゴの件の続報。どうやらパクリ元はほぼこれであろうというロゴが見つかった模様。ニュージーランドの弁護士事務所
JONES & CO社のロゴだ。
&マークをロゴ化した際に似通ってしまうことはあるかもしれないがここまで&の形状と赤いサークルが一致するとは偶然と言うには苦しいだろう。それにJONESなどの文字部分まで黒字にほぼ同じ形状。そこまで偶然で一致すると考えるほうが違和感がある。
楽天のロゴに似ているという指摘からしてもっともな意見であり、その制作費が約1億3,000万円と聞くと誰もが疑問い思うようなロゴに決定していることが問題の根本だ。
公募して最終候補の数点になってから類似ロゴの有無を確認する作業に入り、いわば「身体検査」が済んだ後で都民によるウェブ応募の方が安全・公平な上に都民(納税者)の多数決という至極民主的なロゴ選定となるはずだ。その投票システムを作るのに1億3,000万円どころか500万円もかからない。博報堂という大手広告代理店の仕切りで結果がコレでは税金の無駄使いにしかなっていない。
当ブログの管理人は企業の監査役も務めている上に複数社で取締役でもある。なによりいくつかの企業では取締役会で発言権を有する株主でもある。そういう立場上、不明瞭な内容の記載が会計監査報告書上にあった場合、その件については明瞭な説明があるまで追及する。ロゴ制作費ならびに関連経費に1億3,000万円とあったら必ずその件についての説明を担当部門の長や取締役に求める。こんなことは企業の中では当たり前のことだ。実際にはさすがにロゴ制作費に1億3,000万円なんて見たことも聞いたこともない。その後の展開などは抜きで単体ロゴ制作とすると、大手デザイン事務所に依頼しても300万円程度が相場というものだ。新人クリエイターの場合は30万円でも請負う。1億3,000万円なんてロゴ制作費を報告書で発見したら先ず疑うことは「記載ミス」だ。そしてその記載がミスではなく事実だと判明した際には社内とロゴ制作業者との関係性に疑問を持つことだろう。有り得ない金額が動いた理由について明確な理由がない限りは徹底的に社内の担当者に事の経緯の説明を促す。なぁなぁで済ますことは民間企業では有り得ない。1億3,000万円を稼ぐ為に企業は必死になり、1億3,000万円の経費節約の為に企業は身を削るのだ。1億3,000万円ものロゴ制作費を問題視しない方がおかしい。
実のところデザイン業界では官公庁をはじめとする行政からの依頼は言葉は悪いが「おいしい」とは言われている。資金が潤沢、つまり支払いが良い割に(すぐに最終決定まで行きやすいという意味で)イージーだと長年捉えられているからだろう。つい先日、ある地方自治体の観光促進キャンペーンをミジンコが手掛けたのだが、当然のことなので自慢にはならないが丁寧に仕事をした。そうしたらそのキャンペーンの前回のやり方とはだいぶ異なったようで観光収入が激増したと聞き及んだ。パンフレットなど何から何まで県庁の中でも「写真・コピーが輝いている」とご好評とのお言葉を頂戴した。逆に言えば前のデザイン事務所はどれほどまでに手を抜いていたのか?と気にはなった。本当に良くないと思う風潮は「デザイナーの先生(←本当は先生でもなんでもないが・・・)の作品にケチをつけるなんてとんでもない!」なんてことをクライアントであるはずのお役所の職員の方々が思い込んでいることだ。お金を支払っている側は国なり都道府県なり市区町村であり、その原資は当然のことながら税金なのだ。デザイン事務所がふんぞり返ってしょーもないデザインでお金を得るなんてことがどうかしている。ましてやデザインする気もなく、どこからかデザインをパクってきてはそれを納品するなんて法的にも大問題だ。デザイン業界から「おいしい」、つまりは馬鹿な客扱いされている役人たちにも問題がある。要は舐められているということだ。納税者の辛苦を思えばそんな状況を今すぐにでも脱してデザイン業界が震え上がるほどの厳正なコンペに移行するべきだ。それでもコンペで選出される自信があるデザイン事務所やデザイナーたちだけがコンペに参加すれば良いだけの話で何の問題もないはずだ。
&マークの形状にしろ、周囲の赤いサークルにしろ、それが本当にニュージーランドの企業のロゴから拝借したのかは証明しようがない。い、いや、佐野氏のケースを考えるとデータ内部に何かしらの痕跡を残すほど馬鹿なデザイナーがやっている可能性は否定できないが、基本的にはパクリ論争は簡単には決着がつかないものだ。だからこそ今回のロゴのように楽天にも似ている上に&マークの形状が余りにも「ありそう」もしくはデザイナーが見れば「どこかで見たな」と感じてしまうようなロゴは避けるべきなのだ。お金がかかればかかるほどおかしなロゴが登場するなんて現状は狂っている。
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