日本人で良かったなと思うことのひとつに先人たちが作り上げた「日本の色」を知ることができたことがある。デザイナーとカラーパレットは切っても切れない関係であり、CMYKやRGBといった色を数値化した基準に則って配色を決めていく。よく使う色、見慣れた色ならば数百種は見ただけで数値が分かるというデザイナーも少なくない。万を超える色がそれぞれ数値としてはすぐに表現できるわけだけれど、そんな色の中でも日本が古来より使用している色にはなかなかに趣きのある名前がついていることがある。特にデザイナーではない皆さんでも「それは知っている色だ!」という色の名前は少なくないことだろう。
日本の色の独特な風味が大好きだ。なんともいえない淡い色、強い色、儚い色、そのどれもが日本では何百年、何千年にも渡って伝えられてきた色たちだ。なにかしらのデザインをするときに「サクラ色よりもM(マゼンタ・赤系)強めで」など非常に具体的な表現で作業を進めていけることは日本人デザイナーの大きなメリットだ。勿論、海外でも独自の色表現があるわけなのだけれど、日本のそれは本当に独特で深い。
以下は日本の色の一例。極々一部の色たちだけれどご覧いただけると名前は難しいものの「ああ、知っている!」という色は少なくないかと。そしてなんでこういう記事をUPしたのかということを先に述べたいのだけれど、最後に表示する色を今日考えついたが故。今後はその色も日本独自の色の名称として使用していくと分かりやすいかと考えた次第。
日本の色の一例(画像はミジンコが作成。CMYKの数値を表記。解説は
wikipediaより。最後の色のみ解説はミジンコがしている。)
麹塵(きくじん)とは、天皇のみが着用できた渋い緑色のこと。青白橡、山鳩色とも言う。麹塵の本来の由来はコウジカビの緑の菌糸のことで、柳の若葉を「麹塵の糸」と呼んだ例が白氏文集に見られる。全唐詩の索引によれば、『白氏文集』の用例が圧倒的に多く、その他も中唐以降に限られるようである。また敦煌莫高窟出土の古文書の染織品の色名においても中唐―晩唐の用例が多く、この時期の流行色であったと思われる。一方正倉院文書には色名として「白橡」の用例は多いが、「青白橡」は見られない。平安時代初期に唐の影響を受けて宮廷装束に導入されたものであろう。白橡はどんぐりで染めた薄茶色のことで、麹塵はこれの青みがかったものと見えることから生じた名称であろう。
延喜式青白橡の染め方を見る限り刈安の黄色に紫草の青紫をかけて表すらしく、かなり渋い緑色に仕上がる。紫の染め方自体がかなり手間のかかるもので、かなり難易度が高い染め方であったらしい。
臙脂色(えんじいろ)とは、濃い紅色のこと。名前の由来は中国の紅花の一大産地である「燕支山」にちなみ、本来は紅花染めをこの名で呼んだ。
現在はカメムシ目カイガラムシ上科の一部の昆虫、特にアジア産のラックカイガラムシ、南ヨーロッパのケルメスカイガラムシ、メキシコのコチニールカイガラムシなどの体内色素を浸出させて得るコチニール色素で染めた色をさす。日本には奈良時代に「紫鉱」の名でラックカイガラムシの分泌物が渡来しており正倉院にも薬用として採集された「紫鉱」が保存されている。エンジムシとも呼ばれるこれらのカイガラムシから採集された色素は友禅や紅型の染料として現在も利用される。
朽葉(くちば)とは、日本の古い色の名前の一つ。平安文学では黄赤系統だが、江戸時代以降は朽ちた葉の色に近い褐色系統の色をさすことが多い。
有職故実に重ねの色目の一つとして、表が黄朽葉、裏が朽葉の「花山吹」がある。ヤマブキの花は鮮やかな黄色なので、腐った植物を連想させる「朽葉」という名称は不適当にも思えるが、平安貴族の彩度が高い色、赤系統の色に対する偏愛から考えると文学作品や有職故実書におびただしく登場する「朽葉」は、先の色目の例からも鮮やかな黄色系統の色と考えて差し支えないだろう。この「朽ち葉」とは腐った葉の色というより、元々奈良時代にはイチョウなどの黄葉を指した「もみじ」が、カエデなどの紅葉に使われるようになったので、混乱を避けて落ち葉を意味する「朽ち葉」の名をとったという経緯が考えられるため、単に黄葉の色と取るほうがいいだろう。
橙色(だいだいいろ)は暖色の一つ。果物のダイダイの実から転じる。赤と黄色の中間色。よく似た色であるオレンジ色とは区別される場合もあるが、JIS慣用色名において規定されている橙色とオレンジ色は、同じマンセル値を示す。
色を並べて記述する場合でも、赤・緑・オレンジのように橙とせずにオレンジとされる場合も多い。
萌黄(もえぎ、萌葱)とは、鮮やかな黄緑色系統の色。春に萌え出る草の芽をあらわす色で、英語色名の春野の緑を意味するスプリンググリーンに意味的にも色的にも近い。
平安時代を通して若者向けの色として愛された。今昔物語には浮気者の舎人に腹を立てた妻が萌黄や紅の衣装を着て若い令嬢を装い夫を騙す話があり、平家物語には十八歳の貴公子平敦盛が萌黄縅の鎧を着て戦地に赴くくだりがある。
小沢色(おざわいろ)とは、限りなく黒に近い灰色である。黒のCMYK値が(0, 0, 0, 100)であり、黒からK(黒)の値を1%だけ白寄りにした色となっている。普通の人間の目では黒色にしか見えないが、一部の政治家や国民には黒には映らない場合もあるらしい。見たとおり白とは到底言い難い色ではあるが黒ではない。白か黒かで言えば黒だと答える人がほとんどであろうがそれでも黒ではない。当然のことながらこの色は白でも無い。
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