昨日は尖閣諸島に向かった中国船団や反日デモと称した暴動のニュースで忙しかったが、まったく別のところで日本にとってというべきか世界にとっても大・大・大ニュースがあった。正直いってミジンコには超巨大ニュースだった。今もって興奮が収まらないほど。
数学界最大の難問「ABC予想」解明か(nikkansports.com)
現代の数学に未解明のまま残された問題のうち、「最も重要」とも言われる整数の理論「ABC予想」を証明する論文を、望月新一京都大教授(43)が18日までにインターネット上で公開した。
整数論の代表的難問であり、解決に約350年かかった「フェルマーの最終定理」も、この予想を使えば一気に証明できてしまうことから、欧米のメディアも「驚異的な偉業になるだろう」と興奮気味に伝えている。
ABC予想は1985年に欧州の数学者らによって提唱された。AとBの2つの整数とこれらを足してできる新たな整数Cを考え、それぞれの素因数について成り立つ関係を分析した理論で、整数の方程式の解析では「最も重要な未解決の問題」とも言われる。
英科学誌ネイチャーによると、望月教授はまだほとんどの数学者が理解できていないような新たな数学的手法を開発し、それを駆使して証明を展開している。そのため「論文の正しさを判定する査読に時間がかかるだろう」という。一方で望月教授は過去に優れた実績を残しており、「証明は間違いないのでは」とする数学者のコメントも引用した。
望月教授が開発した手法は将来、この予想以外の整数論の問題を解く強力な道具になるとも期待されている。
論文は合わせて4編で500ページあり、望月教授は自身のホームページで公開した。
望月教授は米プリンストン大数学科を19歳で卒業、京大助手などを経て現職。2005年3月に日本学士院の学術奨励賞を受賞した。(共同)
望月新一教授の簡単な略歴:
1988年 - プリンストン大学を卒業(16歳入学、19歳卒業)
1992年 - プリンストン大学でPh.Dを取得(22歳):指導教授はフィールズ賞を受賞したゲルト・ファルティングス
1992年 - 京都大学数理解析研究所助手に就任
1996年 - 京都大学数理解析研究所助教授に就任(26歳)
まぁ、ミジンコが言うまでもなく望月教授は数学界の宝なのだ。
世界中の数学者が何十年、何百年と解明に心血を注いでも解けなかった問題がある。そういう問題を解いてしまう天才が確かに存在してその天才たちの偉業によって数学が進化、すなわち人類が進化する。
ミジンコでは望月教授の凄さを上手く例えられないというのが本当のところ。ミジンコでは理解できない高みに望月教授はいる。
以下の文章は数学の知識がないと難しい部分があるものの、望月教授という数学者の人柄がよく分かるエピソードも含まれていて是非ご一読いただきたい。
望月教授と同様にして日本が誇る数学者・玉川安騎男教授が述べる
「望月教授の数学」から一部抜粋(望月教授が36歳のときに述べられた望月教授の功績について):
最近の望月さんは, 自身のホッジ・アラケロフ理論の研究を大きく展開(転回?)させて, 圏論を基礎とする全く新しい幾何学の壮大な理論の構築とその数論的応用を精力的に研究されています. 望月さんのこれまでの研究も, ディオファントス幾何への応用を強く意識しながら大理論を構築する, というスタイルが特徴的でしたが, 現在の研究は, ディオファントス幾何をより直接的な研究対象としており, abc 予想などの重要未解決問題の解決が近いことを, 望月さん本人も確信しておられるようです. そのため, 望月さんの現在の研究は, 内外の研究者から熱い注目を集めており, 筆者も, 松本眞さん(広島大), 藤原一宏さん(名大)らとともに, 望月さん自身を講師として不定期に勉強会を開いています.
また, 望月さんのこのようなディオファントス幾何への新しいアプローチから, p 進体上の遠アーベル幾何の絶対版(基礎体のガロア群も固定しないで考えたもの)が数論的に重要であることが示唆されています. この方向では, 望月さんは, 例えば, p 進タイヒミュラー理論における標準曲線においてこの絶対p 進グロタンディーク予想が成立することを証明しました. より一般の双曲的曲線については, 望月さんと筆者の間で議論が現在進行中です.
望月さんが(筆者の2か月後に)数理解析研究所助手として就任されて以来, 遠アーベル幾何を中心にして, 二人でたくさんの議論をしてきました. (というと聞こえがいいですが, 主に望月さんのアイディアを聞かせていただいてきたという感があります.)
望月さんの数学は常に斬新で刺激的で, 筆者のこれまでの研究も, そこから大きな影響を受けています. 現在も, 望月さんから「ちょっとした観察があるので聞いてほしいのですが」というような控えめなメールをもらうことがよくあり, しばしばその観察はちょっとしたものではなく, 大きなブレークスルーとなりうるようなものなので, いつもわくわく(少しドキドキ)させてもらっています.
普通の研究者(例えば私)であれば, ディオファントス幾何に関する結果をなるべく早く形にして2006年のフィールズ賞に間に合うようにと考えるでしょうが, 望月さんは, 賞に対しては全く無欲(というか, むしろやや否定的)で, 十分時間をかけて基礎理論を満足のいくような形で完成させることに力を注いでいます. また, (A. Wiles がフェルマ予想に挑んでいた時などと違い)大予想の証明に向かう途中の理論についても,全てプレプリントなどで公開しています. それを見て誰かが先に証明してしまうのではないかという周囲の心配もどこ吹く風, 「自分の理論を理解して先に証明してくれるのであればむしろありがたい」とおっしゃっています.
現在36歳の望月さんが, これからどれだけの研究成果を人類に遺してくれるのか,非常に楽しみにしています. (同時に, これからどれだけこのような文章を書かせていただくことになるのか, 少し不安に感じています....)
フィールズ賞は40歳以下でないと受賞できない。望月教授はそういった賞についてはまったくの無欲のようだ。自らの画期的な理論も出し惜しみすることなく全て公開しているところにも望月教授の人となりが伺える。本当の天才とはそういうものなのだろう。
ABC予想が解明されれば本当に人類の新たな一歩だ。望月教授ならびに望月教授を支える数学者の方々には感謝してもしたりない。
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