写真の男性は皆さんもご存知の再建おじいさんこと只野昭雄(てるお)さん。今年の6月に旅館を見事に再建、その3ヵ月後の9月中旬、間質性肺炎のためにお亡くなりに。享年83歳。
旅館の営業再開を見届けてから旅立たれた。まさに有言実行の人だった。詳しくは→
夫の遺志 旅館再建 被災した場所…「これで良かったか」(東京新聞)
震災直後、フジテレビの取材班はどのリポーターも被災者たちを「泣かせよう」と誘導するような質問を繰り返し、なるべく多くの号泣する人々を撮ろうと必死になっていた。そりゃもう酷いものだった。そんな猛烈なフジテレビの取材攻勢の中、3日目にしてやっと救助された只野さんのお言葉が痛快だった。「また再建しましょう。」
3日間も2階まで浸水してしまった旅館の3階で救助を待っていた只野さんご一家。やっと救助された只野さんにいきなりマイクを向けるフジテレビ。先ずは脱水症状や怪我の有無を確認するのが人の筋道だと思うのだがフジテレビはそうではなかった。嘆き悲しむ被災者の映像を撮ることにとり憑かれているかのようだった。そこで出た只野さんの一言は痛快だった。あの一言にどれだけ日本が救われたことか。
日本を励ましたのはメディアではなく、辛い状況の中でも前向きに生きる姿を見せた被災者一人一人であり、それを支えようとした全国の支援者たちであり、言葉どおりの献身的な救助活動を続けた医療関係者、警察、消防、救急隊員たちであり、自衛隊であり、米軍であり、海外からの多大なる支援だった。メディアはなんとか悲惨な光景を録画しそれを流そうと必死だっただけにしか見えない震災直後の日々だった。
そんなメディアの中でもフジテレビの酷さが特に印象に残っている。ミジンコはフジテレビの今の低迷はなにも韓流ゴリ押しへの視聴者のウンザリ感だけではないと見ている。自分の場合は、最初にフジテレビにチャンネルを合わせるのが嫌になった理由は震災直後のニュース番組の数々だった。そういう視聴者は少なくないと見ている。本当に各局を比較してもフジテレビの「悲惨な光景、泣きじゃくる人々を撮影して流す」の方針が際立って醜かった。
今でも覚えている笠井信輔アナは母親の遺体が見つかったとの報を受けた直後の少年にマイクを向けて感想を求めていた。父親でもあるはずの男が番組優先でここまでのことをやるのかとぶん殴りたくなったほどだ。後にこのアナウンサーは「僕は しゃべるために ここ(被災地)へ来た」という本を執筆し出版している。印税は被災地に全額寄付すると述べていた。印税を寄付したところで当時の被災者たちが無慈悲な取材によって受けた心の傷は癒えない。印税の寄付で当時の批判をかわそうとしているのがミエミエで吐き気がする。この本の中で「あえて、被災者にきつい質問をするわけ」の言い訳を書いている。それを読んで吐き気が2倍。朝はずっとフジを見ていたが笠井アナの件もありもうフジを見るのは止めた。
(旧姓)島田彩夏アナはヘリからのレポートで興奮し過ぎてレポートになっていなかった。ひたすら叫ぶだけ。この人がお昼のニュース番組を務めているので平日休みのときでも間違ってもフジテレビにはチャンネルを合わせないようにしている。以前は昼は30分で済むフジを十数年見ていた。ヘリからのレポートで興奮していただけで嫌悪感が出たのではない。両側が通行不能となり橋(高架道路?)の上で取り残されている被災者たちを延々と興奮気味にレポートしていたからだ。まさに要救助者たちを更に苦しめる行為だった。なぜか?取材ヘリが飛んでいる場所は救助のヘリは避けて飛ぶからだ。突発的な動きが予測し難い取材ヘリの周辺では衝突事故のリスクが高い。その為、要救助者を探すヘリはその空域を避ける。つまり取材ヘリは救助のヘリを遠ざけ、救助を求める人々の助けを求める声さえもヘリの爆音でかき消すのだ。延々と助けを求める人々を空撮し結局は要救助者を一人として助けない取材ヘリ、そのヘリから大興奮の実況をするアナウンサー。大きな余震が続いていた時だった。橋がいつ崩れるやもしれないという状況だった。一刻も早くそこで立ち往生している人々を救助すべきだった。取材ヘリが延々と上空を飛んでいたら救助のヘリが近づけない。そんなことは取材している側は分かっているくせに実況中継を優先したのだ。これで嫌いになるなというほうが無理な話だ。
また再建しましょう。その通りだ。海外移住に心が揺れていたときの大震災だった。震災だけのことではなく、民主党政権後の悲惨な日本の状況を見てどうしても再建に加わってから将来のことを考えたくなった。要は口惜しいのだ。このままでは済ませられない。それだけは受け入れ難い。自分が3日間閉じ込められた直後にまた再建しようと言えるのかは分からないが人生の大先輩がそう笑顔で言ったのだから応えないわけにはいかない。そういうカッコイイおじいさんになりたいのだから再建どころか前よりも良い日本にしなければ。只野さんに恥ずかしくないような日本に持っていかないとならない。
[75回]
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