昨日、家電量販店のブルーレイ・DVD販売コーナーにて「ポール・ウォーカー追悼セール」というものを見かけた。「ワイルドスピード ユーロミッション」や「ヘキサトロジー」というシリーズ6作品収録のパッケージのセールだった。そこにあった手書きのポップ2つには「ワイルドスピード ユーロ」と書かれていてブルーレイ・DVD販売の担当者が作品タイトルすら覚えていないことが窺えた。大ヒット作品とはいってもそういうものなのだろうとは分かっちゃいるがなんだか切なかった。「ポール・ウォーカー追悼」とするならばポール・ウォーカーの名演が輝いている「ボビーZ」や「イントゥ・ザ・ブルー」、そして最新作の「逃走車」など並べて欲しかった。
「ワイルドスピード」の大ファンだと自他ともに認められているミジンコだが実はブルーレイの商品をひとつも所有していない。DVDは1~3まで所有しているがブルーレイは1枚も持っていない。ブルーレイだけでも何百本も所有している身だが本当にこの大好きなシリーズのブルーレイはひとつも所有していない。なぜか?4が出た頃には我が家にもブルーレイ再生機があったのだが、当時「クアドリロジー」というシリーズ1から4までを収録したパックが1本1本をバラで買うよりも遥かに安い価格でリリースされたことが理由だ。シリーズが続くことが決定しているのに途中でそういうパックを買うのはどうかと思ったのだ。かといってバラで買うよりもシリーズすべてをまとめたパックで購入したかった。シリーズの同じ作品を観るために何回も映画館に足を運び、その後、ブルーレイをレンタルまでしているがブルーレイは購入していないのだ。映画チケット代で何枚もソフトが買えそうなものだが同シリーズは映画館で観てこそだという思いもあったし、僅かとはいえ劇場入場者数に貢献したかったという思いもある。その後、5作品目がリリースされたときにはシリーズをまとめた「ペンタトロジー」、6作品目のときには「ヘキサトロジー」が発売されている。ポール・ウォーカーのもういないシリーズのことを考えると6作品目まででシリーズが終了した感がある。「ヘキサトロジー」を買ってしまおうかと考えている。
そもそも以前はシリーズは6作で完結するとジャスティン・リン監督などが述べていたはずだ。ところがシリーズが余りにも大ヒットするもので映画会社のユニバーサル・ピクチャーズが手放せなくなった。6作品目の「ユーロミッション」からたった1年余りで7作品目の公開を求めたユニバーサルの姿勢に抗議して監督を降りたジャスティン・リンの言い分はもっともだ。同シリーズを立て直した功労者である監督にもっと時間を与えるべきだった。しかも7作品目どころか8作品目の製作まで決定していた。「出せば売れる」と考えた映画会社の傲慢だ。実際、同シリーズは2作目の不発で風前の灯だったところをシリーズとしてはスピンオフ作品のような存在の3作目でなんとか持ち直し4作品目からは大ヒットシリーズの仲間入りだ。
そんなシリーズも監督は降り、そしてシリーズを通じての主人公だったポール・ウォーカーを永遠に失ってしまった。ユニバーサル・ピクチャーズはそうは決断しないだろうが「ワイルドスピード」という素晴らしいシリーズが駄作の連続で続くよりは6作品目で完結とする方が美しい終わり方のようにも感じる。ネタバレになってしまうが6作品目のラストは3作品目と直結しており3のあるシーンが再現されている。つまりもう続編ではシリーズの功労者であるサン・カンの登場も回想シーンなどでしか有り得ないこととなった。ポール・ウォーカーももういない。監督はジャスティン・リンではなくジェームス・ワンに交代した。「ソウ」で大ヒットを飛ばし延々と続いたシリーズの製作総指揮、その後も「インシディアス」や「死霊館」などホラー映画を専門に監督していた人物だ。なぜに「ワイルドスピード」を?と大いに疑問な監督起用だ。そもそも「ソウ」は1作目以降は酷評されながらも何作も続いた。そういう監督が「ワイルドスピード」に致命傷を与えるような気がしてならない。
ヴィン・ディーゼルのツイート:
(ポール・ウォーカーの悲報を知ったときに)すぐにカリフォルニアに飛び、空港から直接ポールのお母さんの家に向かったんだ・・・
ポールのご家族には自分の支えが必要だと思ったからなんだ。でもご家族にお会いして気がついたんだ。自分の方こそご家族の支えに救われているのだということを。
ポールのお母さんは俺を抱き締めてくれてこう言ったんだ「なんてかわいそうに」と。「かわいそう?」息子を失った母親が俺にかわいそうにだって?お母さんは「そうよ。あなたは半身を失ってしまったのよ。」と言ってくれたんだ。
確かにもはや二人揃っていないと違和感を感じるほどの主人公コンビだった。大ヒットシリーズの主人公二人が人格的にもすこぶる評価が高く、なによりとても温厚で誰に聞いても「優しい」と評判なことはハリウッドという激烈な競争社会でも異例なことだった。
「ワイルドスピード」のメイキング映像は現場の雰囲気の良さがよく伝わっていた。スターたちが共演する作品では得てして出演者同士の主導権争いが起きるものだがポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルの場合は真逆なのだ。常に相手を引き立たせようと努力しているようで不思議な光景にすら見えた。カット割りで自分よりも相手を優先する主人公二人だからこそのシリーズの大ヒットだったように思う。
半身を失ったヴィン・ディーゼルのことが心配だ。見た目がマッチョなので役柄はワイルドな感じのものが多いが穏やかで愛嬌のあることは有名だ。高速道路事故の現場にいてバイクから降りて爆発するやもしれない乗用車から怪我人を引き出して救助したこともあるタフガイではあるのだがとても繊細な人物だと聞いている。ポール・ウォーカーとの共演を本当に楽しんでいたようで、もはや「ワイルドスピード」への出演はライフワークのようになっていたのではないだろうか?
ポール・ウォーカーは慈善事業に参加するため、友人の運転するポルシェに同乗し事故に遭った。慈善事業へ向かう途中でのことと聞いてポール・ウォーカーらしいなと思った。「ワイルドスピード」の1作目が意外なヒットを飛ばしたときに暴走運転する若者が急増しているという報道があった。映画の影響だとマスコミは批判していたのだ。それを受けてポール・ウォーカーもヴィン・ディーゼルも映画の中での走行はあくまでもプロドライバーが万全を期しての走りであることを強調して安全運転を呼びかけていた。主人公二人ともが映画のワイルドさとは真逆の穏やかな紳士であることが周知されると過激走行ブームも沈静化したように思う。過激な描写が多い映画の主人公たちだからこそ普段の生活では自分たちに厳しくしていたのだろう。
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