映画「パシフィック・リム」の冒頭で一瞬だけ流れるこのシーンが好きだ。このシーンについてはナレーションでの説明もなく、人種や性別、体型も様々な人々が怪獣に攻撃された場所を見つけながら手をつないでいる。ここでは人類が巨大ロボを開発して怪獣に抵抗しようと決意したくだりのナレーションが流れている。
メキシコ人のギレルモ・デル・トロ監督は日本の特撮やアニメを観て育ち、ハリウッドに渡り成功した。監督の代表作である「ヘルボーイ」は悪魔が人類の為に戦う。そのヘルボーイのチームは人間だけではなく水中生物や興奮すると発火能力を発動する超能力者など多国籍どころか多生命体だ。
映画「パシフィック・リム」でもハリウッド映画では異例の世界を救う組織がアメリカ主体ではない。主人公パイロットと主人公が操縦するイェーガー(ロボット)の国籍はアメリカだがパートナーは日本人女性のマコだ。残された僚機たちとパイロットたちは中国、ロシア、オーストラリアであり、最後の砦となった香港の基地で働く人々は多国籍だ。
マコが空中戦で怪獣にトドメの一撃を入れるときに日本語で「家族のために!」と叫んで怪獣を両断する。これは過去に怪獣の犠牲となったマコの両親という意味ではなくて、幼少より生まれ育った香港基地の全ての仲間がマコには家族であり、その家族のために絶対に負けられないという叫びだった。直前の戦闘で中国のクリムゾン・タイフーンの三つ子たちとチェルノ・アルファのロシア人夫妻が戦死していることは分かっていたであろうマコにとってはずっと訓練を共にし、まさに基地で寝食を共にしていたパイロットたちは国籍を超えた家族だった。
中国はオバマ大統領の尖閣諸島への日米安保条約が適用される旨の日米共同声明を猛烈に批判している。これではまるで中国が歴史的に見ても日本の領土であることが明らかな地域への侵略をしたがっていると宣言しているようなものだ。ロシアはご存知のとおり自分たちでも収拾ができなくなっているウクライナへの侵略行為真っ最中だ。隣国が西側になることを恐れたロシアがこの21世紀に侵略戦争を開始して結果として西側というだけではなくロシアへの憎悪を最大値にまで高めたウクライナを生み出した。国の規模を問わず、国土を荒らされて穏やかでいられる国民なんているわけがない。韓国はオバマ大統領の尖閣諸島への声明を受けて竹島についてもなにか言えと言い出している模様。国際司法裁判所というものがあるのも関わらず、裁判ではなくアメリカ大統領を味方につけて日本の領土を奪おうとするそのやり方は余りにも幼い。
映画のように怪獣が実際に現れることはないだろうが、国家単位ではなく世界の全ての国々が危機に直面したとき、即ち人類の危機のときには今いくつもの国が行っている「侵略を是とする行為」がまさに人類の愚かさの象徴となることだろう。「そんなことをやっている場合か!?」と世界の人々が呆れ絶望することは確実だ。
とっくに人類の危機は存在している。現在、地球上に存在する核兵器の数はどうだろうか?何度地球上の生物を死滅させる量だろうか?地球温暖化が本当に起きているのだとしたら代替エネルギー開発ならびに温室効果ガスの特定とその除去装置の開発は急がねばならない。SF映画みたいな話だが今の段階で巨大隕石が地球に向かってきても小惑星規模の質量の隕石の起動を変えるほどのレーザー兵器も宇宙用の核ミサイルも配備されていない。癌もエイズも対策はあるが特効薬には至っていない。そもそも国連も国連安保理も機能不全なので世界の平和どころかむしろ安保理が世界を混沌とさせている。
ここまで人類は解決しなければならない問題が山積しているというのに領土問題で歴史を振り返らないで駄々っ子のように「欲しい欲しいー!」と叫んでいる国々は少しは恥を知るべきだ。戦争なんかやっている場合か!戦争をやる暇があるのならば上記の問題のひとつでも解決するように国力を挙げて全力で取り組んで欲しいものだ。
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