ジムで猛烈トレーニング中に息も絶え絶えになっていたところにモニターに速報アリ。時刻は18:45分頃だった。ちょうど各チャンネルでニュース番組が放送中だったので少ない情報ながらもノーベル授賞者の氏名などいくつかの情報を伝えていた。少し元気になった。
ミジンコは化学分野の人間ではないけれど、延々と素材開発にヒーヒー言いながら取り組んでいる身なので自分が知っている技術の名前が出てきて感動。ノーベル賞で自分が知っている技術が出たのは生まれて初めてのこと。いつもノーベル賞受賞者が決定してから、やっと功績と授賞者の経歴を知るに至る。
まぁ、そうは言っても「鈴木、根岸(クロス)カップリング」を知っていると自慢できるかというと、そうでもないくらい産業によっては当たり前の知識。その位広く使用されている技術なのでノーベル賞授賞も遅すぎたくらいと思える。
そんなノーベル賞受賞者の方々に毎度毎度のことながら質問するのは化学も物理学も中学生くらいの知識で終わっているニュースキャスターたち。
なにもキャスターや記者に勉強しろだの、もっと知識を蓄えろと言っているわけではない。ノーベル賞受賞者と対等に技術論を語れるようになれと無理を言いたいのではない。ただ最低限の礼儀はあって然るべきだ。解かっていないことを議題にして質疑応答をしても、回答する側であるノーベル賞受賞者たちは毎度困り果てているように見える。テレビ番組はオモシロオカシクしたいが故に安易にノーベル賞受賞者たちに技術的な質問までぶつけるが、その質問の多くはそんなに簡単に説明できるようなことではない上に、ある程度の知識が無い者には答え方に戸惑いが生じることがある。
ミジンコも仕事上は同様の戸惑いを感じるときがあるのでよく解る。勿論、「簡単に説明」というやつはできるのだが、誤解を全く生じさせない為には丁寧に答えたい質問というものあり、そういう答えには時間も必要であるし、相手の理解力、要は事前の備えがどうしても必要となるのだ。
なぜ半導体は電気を通したり通さなかったりするのか?なぜコンピューターは動くのか?なぜ多結晶シリコンを使うのか?そんな質問への答えは確実にあるのだが、それをテレビの尺に合わせて一分で説明できるだろうか?ましてやノーベル賞授賞級の研究成果ともなれば「一言」では言い尽くせない思いがあるだろうに。
相手が理解できるまで答えようというのが研究者たちの人情というものだ。そこを理解した上でテレビ局側は質問者たちを用意しているだろうか?
もうネットで散々嘲笑の的となっているが、報道ステーションの古館一郎の質問などは悪気は無かったであろうが、質問された方も相当に困ったであろう内容。質問自体が迷走しているのだから答えられるわけがない。
右側も左側も間違い。それも途方もない間違い。
鈴木名誉教授の答えは
「両方とも違う。さっきスタッフの人に正しい図を描いて渡したんだけど」とのこと。
事前に正しい図を描いて渡していたにも関わらず、それを使わずに描いたのは意味不明な図。右側のは起こり得ない化学反応というべきか、こういう図を指差してノーベル賞受賞者に見せた行為が悪い意味での伝説だ。
なんでもかんでも知っておけというつもりはない。ただ質問者(キャスター、記者)は最低限の礼儀を守るべきではないだろうか?こういった報道番組で幾度となくこういうあさっての方向の質問をしては、その道のプロフェッショナルである回答者の方々が困惑している姿を見てきたが、今回のはメガトン級に失礼な質問だった。
本当に質問者の礼儀としての基礎であって欲しい、「回答者を困惑させない」ことは。画家に質問するときにその方の描いた絵を一枚も見ないで質問するとしたらどうだろう?映画監督に質問するときにその方の映画を観ていないのに質問は可能だろうか?
ノーベル賞受賞者にもし技術的な質問をするのであれば、やはりそれ相応の人選があって然るべきだ。そうでないと今回の報道ステーションのようなことになる。
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