風が吹くとき デジタルリマスター版(Amazon.co.jp ←レビュー欄に貴重なご意見が多数掲載されています)のパッケージ。ご存知の方も多いでしょうが元々は絵本だったものをアニメーション化したものがこの作品。
絵本版の表紙よりもむしろこちらの方がまだ生き生きとしている草木が描かれているところが意味深く、敢えてアニメ版の表紙を取り上げた。
この作品は原発事故ではなくて核戦争の悲劇を描いているわけだけれど、かつてのチェルノブイリ、そして今の福島原発事故と共通している点が多い。善良で慎ましく生きている人々が迎える静かだけれど避けられない悲劇、そう放射線がもたらす犠牲が淡々と描かれている。この「淡々と」がとてつもなく恐ろしいのだ。
日本では小学校教育の段階から既に・・・・・
「原発は安全だ」
「原発はクリーンだ」
「原発は他のどんなエネルギーよりも低コストだ」
・・・・・と教えてきた。
全部大嘘だ。3/11以前にはいくら「嘘だ!」と言ったところで失笑されていたのだ。本当に日本はそういう世界だったのだ。身を持ってそれは経験している。
長いこと、ミジンコはこの絵本を読み聞かせることを日本人だけではなく世界中で勧めてきた。要はこっちが核と共存する人類の末路だと言いたかった。
原発推進派たちの中にはこの作品と原発は関係がないと言う者もいた。おまえの顔をいつまでも覚えているぞ!
同じだ。今、福島、そして東北、関東、もしかしたら日本どころか世界の人々がこの作品の老夫婦と同じような犠牲を自分自身が強いられるか、親族、友人たちがこういった犠牲者として名を連ねることになるかもしれない。放射能汚染に対する知識が乏しいことがここまでの悲劇を生みだすのか、この「風が吹くとき」を読めばよく解るはずだ。この作品に登場する老夫婦はなにも悪くない。なにも悪くはないのだが助からない。
自分の人生観が変わったのは、大儲けするために存在しているかのように思っていたシリコンバレー発のベンチャー企業への投資の世界で、その大儲けしたお金のかなりの割合が地球環境保全の技術開発に注がれていると知ったとき。驚いた。金の亡者かと思っていた人たちが死ぬ前までに世の中を良くしようと今までの慎重な投資とは真逆の博打のような成功率の低いベンチャーに次々と投資を始めたのだ。
Amazon.comやGoogleで儲けた人たちが地球のことを考えているなんてなんのことかと最初は疑ったら、大真面目に天文学的な投資額で不可能を可能にしようとしていた。そんで外から見ているつもりが巻き込まれた(苦笑)
いい歳してから物理学や化学を勉強するハメになるとは本当に想像していなかった。もっと遊んで暮らすはずだったのに!
今、Googleは自社のデータセンターが消費する電力についてバッシングを受けており、その対応策として地熱発電の技術開発をする会社への投資も始めている。火山の多い日本だと尚更使えそうな地熱発電所の技術が今そこにある状態なのだ。日本人が解らないものをググってみてGoogleが利益を上げて結果として地熱発電のテクノロジーが推進される。こんなに誰もが得するサイクルってなかなか無い。そんなことを考えて日々の生活を送っていたら、今回の原発事故とその後の政府や東電の余りにも人命無視な対応。最近、周囲の人々に「静かに怒っていますね」といった表現をよく使われる。怒りが大き過ぎて怒っていないという妙な状況が周囲の人々にも伝わっているらしい。
この「風が吹くとき」を見てもまだ政府関係者や東電の幹部たちは同じようなその場しのぎのデタラメを言い放つことができるのだろうか?
そんなどうしようもないクズ野郎たちならばもう虚しいだけだ。彼等には権力を手放したときに覚悟をしておけと言うのみだ。
[56回]
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