どうやら日本には体罰を容認する大人たちが少なからずいて「昔は~」とか「体罰があるからこそスポーツチームが強くなる」といった荒唐無稽、空前絶後の馬鹿げた理論を持ち出すオオバカヤロウまでいる始末。
バスケをやっていて最近またバスケをやり出した身として、また日本人の中ではかなり珍しく弱小校とはいえアメリカの大学バスケをスタメンを張った身として、まぁ、要は遠まわしに言わないでストレートに言えば、今取り沙汰されている高校バスケの暴力監督(U-16のアシスタントコーチもやっているとか?)よりもバスケット選手としての能力は上なんだろうなと自画自賛なミジンコだけれど、要はそういう人物がバスケを語ると少しは説得力があるかなと思ったりなんかするのでこうやってこっ恥ずかしいことを書いている。
で、なにが言いたいのかというと殴られたからってバスケが上手くなる可能性は1ミリもないってこと。それよりは基礎体力を向上させて休むときは休んで故障を未然に防いだほうが良い選手になる。ミジンコはバスケの指導者から殴られたことなど1度もない。それでもアメリカの大学バスケのレベルは非常に高く、基礎練習に合わせて理論を学ぶだけでも、日本国内のバスケとは別世界のバスケを体験できた。日本に帰国して最初にやった3on3で日本人のヘタクソかファウルしかないやり方に辟易としてアメリカ人たちとチームを組んだというのが本当のところだ。勿論、アメリカ人の身体能力は高いのだけれど、それよりもなによりもバスケを理解しているその深さが雲泥の差なのだ。このときはどうすればいい?こうやられたらこう返せばいい、といった戦術を学生時代のバスケでこれでもかっていうくらいに学んでいるので社会人になった後で体力が落ちてもバスケでの強さは衰えないのだ。つまりバスケという学問を深く学んでいるということ。根性論だとか体罰だとかでは絶対に本当にバスケが強い選手には勝てない。
はっきり言ってしまえばバスケは難しいのだ。多くのスポーツと同様にしてバスケはその理論を学んで戦術を編み出すまでに至る優秀な監督はなかなかいない。なぜならば日本での受験戦争と同じく、やるべきことは分かっていても勉強するのは大変なことなので多くの人は避けてしまうからだ。バスケが死ぬほど好きで好きで3度の飯よりもバスケといったタイプの人間で更にアタマの回転が速い人でないととてもバスケットボールの本当の指導者にはなれない。あの有名な漫画の「スラムダンク」でさえ、ただの一人もバスケットボールの指導者としては適任に見えた人物がいない。監督ではあるが本当に指導をしているのかは甚だ疑問な人物ばかりなのだ。あの名作漫画を批判しているわけではなくて、そのくらいバスケの指導者というのは難しいということを言いたいとご理解いただきたい。「スラムダンク」で、唯一、この監督が馬鹿正直で指導者らしいなと思ったのは豊玉高校の前監督の北野さん。作中では既に監督を解任されていたけれどラン&ガンという走りまくって点を取るという選手の体力、攻撃力勝負に特化した作戦だけを徹底して指導していた。作者の井上雄彦さんが物凄くバスケに詳しいので登場したキャラクターだと思う。要は高校バスケの段階ではまだまだバスケットの戦術展開を指導するには時間が足りないからこそ、一番分かりやすくて指導を受ける側も学びやすい戦術を北野前監督は採用していたということ。高校生という年齢の選手が一番能力を活かせる戦術こそがラン&ガンなのだ。クラブチームならばまだしもバスケ暦が数年の浅い経験しかない選手たちが最も活きる戦術だ。
長々と書いた。バスケは難しいということを伝えたいが故だ。つまり指導者は相当に勉強していかなければとても務まるような仕事ではないのだ。NBAの監督たちを見れば一目瞭然だ。超一流選手だった人でもアシスタントコーチでも難しいと言われる世界なのだ。数秒ごとに笛が鳴るゲームの中で、その都度、数百はある戦術のどれが最適かをすぐに判断するのが監督の仕事だ。その戦術に即したチーム作り、つまり選手が適材適所となるように育成していかなければならないという厳しさだ。チームが思うように機能しないからといって選手を殴る監督だって?そいつは監督がしたいんではなくて暴力を振るいたいだけだ。自分がバスケの勉強を疎(おろそ)かにしてチームが強くならないからといって選手に暴力を振るうなんて奴が務まる仕事ではないのだ、バスケ監督は。
今回の悲劇は指導する力がない暴行魔が単純に発狂して長期間に渡って少年を執拗に殴り続けた暴行であって体罰なんて言葉で誤魔化されるべきことではない。もしそれが体罰だと今でも思う馬鹿がいるのならば先ずは自分が毎日誰かに殴られ続けてみるべきだ。反抗できない相手に連日殴られ続けても同じことが言える奴なんて絶対にいない。
自殺した少年やそのご両親に対しての心無い発言もこの数日でイヤというほど見てきた。映画「告発の行方」はご存知だろうか?ジョディ・フォスターがオスカーを受賞した作品だ。レイプ被害者が女性弁護士と共に裁判で闘うという話なのだが、最もフォーカスされていたことはレイプの直接的な加害者だけではなくその場(バー)にいてレイプを煽った男たちも有罪になるまで闘った点だ。今回、暴力監督を擁護する人たちがいて、あろうことか自殺した少年やご遺族を非難するかのような発言まで出ている始末だ。映画「告発の行方」を是非ともその馬鹿たちに見せたいものだ。加害者を煽って「犯罪なのに犯罪でなかったかのように振る舞うこと」がいかに罪深いことなのかを少しは学んで欲しいものだ。
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