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ブエノスアイレスで開かれているオリンピック招致の最終決戦の場の映像を何度か見た。
東京、現地会見で「日本は安全」とアピールも、「原発汚染水」に質問集中(msn 産経ニュース)
東京五輪招致委の竹田恒和理事長が最初は英語で記者たちの質問に答えていた。福島原発が汚染水を垂れ流している現状において記者たちの質問がその件に集中するのは当然の流れだった。ところが招致委員会の理事長がその件についての回答を用意しておらずその場で思ったことを述べているだけのように見えた。「Tokyo is very safe.(東京は安全です。)」、こんな答えでは記者たちも唖然としたことだろう。その後、つたない英語での回答が限界をきたし、理事長は日本語での回答に移行した。日本語での回答もどうかしている。福島から東京は250kmも離れているので影響がないという趣旨の回答をしていた。原発事故地点から250kmしか離れていないと感じるのが普通の感覚ではないだろうか?
なんともお粗末な記者会見であった。場を和ませたと報道されているロボットのパフォーマンスも記者会見場の雰囲気を映像で見るに滑っていたように思える。汚染水の対応についてもっと詳しく説明すべきところだった。あれではオリンピックがどうの以前に日本が放射能汚染についてテキトーな国であると広めたようなものだ。実際そうだと言われれば否定できないが・・・・・。
安倍首相も汚染水問題は7年後には解決していると公に述べた。これも酷い無責任さだ。解決法は提示しないで「解決する」と明言する。科学者ではなくて政治家らしいといえば政治家らしい発言だ。アベノミクスととても似ている。具体的なことは言わないで実現すると言っている。希望を与えるばかりが政治家の仕事ではない。具体的な対策案を示さないとその計画が実現性があるものなのか、どのくらいの期間で成果を見込めるのか等、まったく見通しが立たない。判断材料を与えないままで「こうなります」では詐欺師の洗脳トークと大した違いがない。
ALPS(アルプス:現行の汚染水処理装置)ですら満足のいく成果を果たしていないというのに次の7年間でそのALPSの改良型もしくは新型が劇的な進化を遂げるとは今の段階では言い切れないはずだ。そもそも今回国費を投じることとなった470億円がちゃんと機能するのかも定かではない。本当に足りるのだろうか?今、確実にこうだと言えることはないはずなので7年後の解決という発言は原発事故を起こした国の首相として非常に無責任な発言だと感じている。こういうことにタイムリミットを設けることの危険性も感じる。間に合わないからといって無理をすれば傷が深くなることだって有り得る。
汚染水漏洩についての対策の柱は2つ。地下水が原子炉建屋に流入するのを防ぐ「凍土遮水壁」の建設がひとつ。もうひとつが汚染水から放射性物質を取り除く多核種除去装置「ALPS」の増設・改良であるわけでの増設・改良の成功を指して7年後は安全となっていると安倍首相は判断したものと思われる。ここがなんとも同意しかねる。ALPSは現行とても上手くいっているとは言い難い。だからこその改良、もしくは新型除去装置の開発が汚染水問題解決の大前提のはずだ。安倍首相がそのことを知らなかったとは思えないのだがそのことを知っているのに7年と言ったその根拠がまったく分からない。
この汚染水問題の事業費の内訳は現在のところ、遮水壁320億円、除去装置150億円。今年度予算の予備費(総額約3500億円)から遮水壁に140億円、除去装置に70億円を充てて事業を前倒しで進める計画となっている。470億円の巨額の国費を投じても事業費全体の予算からしてみればそれほど充分な額ではないのだ。メルトダウンの処理ではなく、あくまでも汚染水対策だけでもここまでの巨額の対策費が必要となっている。そのくらい大変な事故を我々日本人は起こしてしまったのだ。
東京五輪招致委の竹田恒和理事長も安倍首相も東京にオリンピックを招致したいというその熱意は理解できるし決して間違った情熱とも思わない。オリンピック開催による経済効果の試算が3兆円というのはミジンコは既に発展している東京については眉唾だと感じているが一部の産業は都民の負担の下に好景気を謳歌することだろう。そんなオリンピックを招致したいという願いが原発事故を「大したことないこと」のように世界に発信する行為につながっているのだとしたら最低最悪な嘘を発信していることになる。原発事故は大変な危機であることは間違いなく、東京が確実に安全だなんて言い方はまるで現実を直視していない。オリンピック誘致のためには福島原発事故がまるで小さな出来事であるかのようにこの日本では振る舞わなければならないのだろうか?馬鹿げている!そんなことには同調できない。