ブログをそんなことで休むなんてと思われるかもしれないが余りの衝撃と悲しみでブログに手がつかず。出張続きな上に普段は芸能ニュースをチェックしない為にこの訃報を知ることが遅れた。事故は自分がアフリカにいるときだったので速報は知らず、そのままサンディエゴに帰ったものの知らないまま。6日に渋谷のスクランブル交差点前での追悼式をファンたちが行うという情報で初めてポール・ウォーカーが旅立ったことを知った。泣けた。自他ともに認める・認められるであろう映画ファンのミジンコであるが俳優の訃報で泣くことなんてそうはない。今回ばかりはボロボロと泣いた。今この記事を書いていることも辛い。
ブログで幾度となく映画「ワイルドスピード」のシリーズについて取り上げているのでご存知の方々も多いかと存ずるがミジンコは同シリーズの大ファンだ。シリーズの新作をいつも楽しみにしていた。「スマッシュヒット」という言葉を最初に学んだのはこの映画のおかげだ。それほどの大予算でも有名キャストでもないいわゆる余り期待されていなかった作品が映画会社や市場予測を良い意味で裏切って興行収入で好成績を収めることを指す。「ワイルドスピード」の第1作がまさにそれだった。典型的な2枚目俳優でありながらもそれ故に伸び悩んでいたポール・ウォーカーと当時は肉体派俳優として主演オファーが殺到していたというヴィン・ディーゼルのダブル主演だった。二人とも当時から大スターだったトム・クルーズ、ブラッド・ピット、ジョニー・デップなどのようにメディアに常に取り上げられる2枚目主演スターたちとは異なり、こう言ってはなんだが数年で主演オファーが無くなっていくような雰囲気さえ漂わせていた。実際、ポール・ウォーカーは「南極物語」などで主演はしているものの大作の主演などは無く、「ワイルドスピード2」もイマイチなデキでシリーズ終了すら危ぶまれた。ヴィン・ディーゼルは大作主演もこなしたものの、不発続き、映画界から消えた時期すらあった。その消えた時期にカメオ出演した
「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」が復活のキッカケだった。そのカメオ出演を観た友人やファンからシリーズ復帰を熱望されて今に至る。2人とも代表作と言えばどう考えてもワイルドスピードシリーズだ。
「2」の出演をヴィン・ディーゼルは断っている。シリーズものを避けたのもあったらしいが同じ時期に「ピッチブラック」という低予算SF映画の続編の大コケした大予算作品「リディック」のオファーは快諾していた。ポール・ウォーカーからしてみればガッカリだったことだろう。「2」は駄作とは思わないがスマッシュヒットした第1作のような勢いを失っていた。ポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルのライバルでありながらの友情がシリーズを通してのコアな部分だった。常に同シリーズに献身的だったポール・ウォーカーは「3」では出演していない。ポール・ウォーカーが断ったのではなくシリーズが低迷したと判断した映画会社が彼にオファーしなかったのだ。なにしろカメオ出演のヴィン・ディーゼル以外、誰も前作からの出演はなし。監督がジャスティン・リンとなりシリーズが一新されたのだ。しかしジャスティン・リン監督は3作目こそ(サン・カンの出演など後でつながるとはいえ)シリーズから独立したかのような作品だったがヒットした1作目からの流れを決して無視しない作りをその後披露していく。なんと最新作の「ユーロミッション」ではポール・ウォーカーやヴィン・ディーゼルが第1作のあの家に帰る憎い演出までしている。
そんなジャスティン・リン監督は映画会社の完成を急がせる姿勢に抗議して降板。シリーズをここまで成功させた監督を降板させるような事態を招く映画会社のクソッタレさ加減は相変わらずだ。大人気ドラマ「ウォーキング・デッド」でもシリーズの生みの親であるフランク・ダラボンの名前をクレジットに残しながらもクビにしてダラボンの弟子とも言えるスタッフで今も製作を継続中のAMCという会社があるが本当に映画・ドラマ製作会社の役員たちの作品作りの「分かっていなさ」に呆れる。ワイルドスピードシリーズもジャスティン・リン監督降板、そしてポール・ウォーカーの悲劇でまったく別物となることだろう。なんでも6作目公開のときに既に8作目すらも製作が決定していたらしいがもはやなにも期待していない。3作目の主演のルーカス・ブラックのシリーズ復帰もあるとかで本来このシリーズはジャスティン・リン監督以外は考えられない。
これはポール・ウォーカーの訃報を受けて公開された映画のシーンを抜粋した追悼映像。映像の後半、ヴィン・ディーゼルが「人生で一番大切なものは・・・今ここにいる仲間たちだ」と述べ、「家族へ」と乾杯するシーンが流れる。このシリーズでは本当にこの仲間たちの絆が熱い。劇中でこの仲間たちを何人も失うことすらも残念でならなかった。まさかポール・ウォーカーの姿をもう見られなくなるなんて・・・・・。
ポール・ウォーカーは私生活でも常に謙虚だったと聞く。188cmの誰もが認める美形とはいえモデルから俳優に転身したものの仕事が無く、元恋人との間にできた娘さんの養育費にも困窮しエージェントに仕事はないかと頼んで最初に掴んだチャンスが低予算映画の「ワイルドスピード」の第1作目だったとか。見事にそのチャンスを掴んだものの3作目で外されたときはさぞ悔しかったことだろう。4作目でもはじめにヴィン・ディーゼルの復帰ありきのような雰囲気だった。それも悔しかったことだろう。でもシリーズのファンは知っている。このシリーズの不動の主人公はポール・ウォーカー演じるブライアンだった。
シリーズがヒットしセレブの仲間入りとなった後でも保健所で生まれた雑種犬を引き取って飼っていたポール・ウォーカー。高級なものを追求するわけでもなく、派手な噂は皆無だった。大学で学んだ海洋学をずっと継続して研究していたとか。映画の影響もあってかカーマニアだったそうだがそれも高額所得者としては目立ったものでもなく、その人柄が分かる所有車の数々だった。彼が所有していたクルマは日産のシルビアとスカイラインR32。ランボルギーニやフェラーリではなくチューンしたニッサンの車。走りを追及した本物の走り屋のチョイスだ。劇中でブライアンが特に日産車を運転することが多いのは現実でのポール・ウォーカーの愛車が日産車であることに起因している。シルビアもスカイラインもポール・ウォーカーにもう運転されないことを悲しんでいることだろう。素晴らしい男を失った。今はご冥福をお祈りするよりもまだ帰ってくるんじゃないかと期待している。
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