2014年のノーベル物理学賞を青色発光ダイオードの発明に貢献のあった赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏の日本人3氏が受賞した。これで自然科学に於ける国別ノーベル賞受賞者数は以下のようになった。
21世紀の自然科学ノーベル賞 国別ランキング
順位 国 物理学 化学 生理医学 合計
1 アメリカ 18 19 16 53
2 日本 3 8 1 12
3 イギリス 2 - 8 10
4 フランス 2 1 3 6
5 ドイツ 4 1 1 6
日本は第2位。
軍事力や発言力としての強国や大国というものに該当する国としては中国やロシアも上位に入るのだろうが、科学力、即ち革命的な発明を生み出して世界を便利にしたり、人々の命を救う先端医療を創造していくことに関しては、自然科学ノーベル賞受賞者数上位5ヶ国は顔ぶれはまさに順当なところだろう。国家体制、最高学府と称される教育機関の充実度、研究者たちの意識の高さ等、これら5ヶ国はなるべくしてノーベル賞受賞者たちを多数輩出する国となっているのだ。
今は第2位の日本だが今後はこうはならない可能性が高い。ノーベル賞受賞者が取り組んでいる基礎研究には莫大な予算がかかる。その研究費への出し渋りがこの日本では当たり前になっているからだ。数十年後に結果がやっと出るような研究に国も企業も投資したがらない風潮が当然のようになってしまっている。
確かに結果が出たとしても数十年後となる研究に対して予算を組むことは容易くはない。但し、その数十年後への投資が今までこの日本では行われていたからこそ、今の日本の第2位なのだ。自然科学分野に於いてアメリカに次いでの第2位、これこそが本当の国力というものではないだろうか?もっと具体的に言えば国家としてのポテンシャルだ。資源でもなく、人口でもなく、科学力での国力とはなんとも誇らしく感じられないだろうか?そんな日本人らしい誇りを失わない為にも、これからの日本でも基礎研究への理解が重要だ。
昨今は理研への批判も多く、確かに理研の体制は到底褒められたものではないが、理研で行われている研究の多くは日本にとって非常に重要な将来への投資だ。理研の研究者たちなどはまだ恵まれている方で、大学機関の研究者たちは予算獲得に奔走する毎日だ。そりゃそうだ、金融機関は50年後のノーベル賞が確実といっても投資どころか融資(要返済)すらしてくれない。ミジンコのようなベンチャー・キャピタリストが投資をしてくれる場合もあるにはあるが、四半期報告書を機関投資家などに提出しなければならない投資家たちは数十年なんの結果も出ない研究に投資することは非常に難しい。想像できるだろうか?30年間なんの進捗状況も報告できないものの1年に4回提出される四半期報告書と年に1回の年次報告会を。
基礎研究への投資は国から、即ち税金から行われることも致し方がないことなのだ。それを無駄使いというは易しいが、将来の日本の為にも有意義な投資である場合もあるのだ。現に日本の場合は上記の順位のように結果が伴っている。気の長い話ではあるがノーベル賞受賞者を輩出して日本発の先端テクノロジーが後に莫大な利益をもたらすのだと考えればそれほど悪い話ではないはずだ。理研叩きをよく見聞きするがそれが行き過ぎるとむしろ自分たちで自分たちの首を絞めることにもなりかねない。研究がイコールして悪というわけではないのだから。
多くのポスドクが不遇であることは広く知られた話であるし、前述のように国も企業も予算を渋りに渋っているのが今の日本の現状だ。この現状が30年後にはノーベル賞受賞者を全く輩出しない日本につながるのではないかと懸念している。そんな日本を皆さんは望むだろうか?そんなのは日本らしくないと思ってしまうのは自分だけだろうか?理研や国立大学が助成金に与りながらも国民に不誠実な対応をしてしまった事例が無いとは言わないが、ほとんどと述べて差し支えないほど大多数の研究者たちは日々の研究に人生を捧げて、まさに給料以上の貢献を国にもたらしていると断言できる。今よりも税金を湯水のごとく研究者たちへ!とまでは言わないが研究がこの日本でまだ続けられるように少しばかりは税金を使うことを多めに見る、そんな土壌を維持、継続していくことが第2位を維持することにつながる。
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