ガキンチョども、もとい高校生たちに通じるカタチでグラフィックデザイナーになるためには!とアドバイスするにも、先ずは目指している段階の人たちが実はグラフィックデザイナーがどういう職業を指すのか理解していない可能性が大いにある。
恐らく高校生くらいだと「絵(CG)を描く人」というくらいの認識かもしれない。それはあながち間違ってはいないのだが、自分が描きたい絵を描くわけではなくて、依頼主(大抵は企業)の利益につながる絵を描くのがグラフィックデザイナー。
要は自分が描きたい絵を描くのが画家であって、自分が描きたくなかろうと依頼主の望むものに限りなく近づくように絵を描くのがグラフィックデザイナーということ。
つまり、自分が描きたい絵を描きたいのならば画家を目指すべきであって、グラフィックデザイナーでは決してない。
物凄く絵が上手いのに自分の為の絵ではなく、依頼主の利益を追求するために消費者に好感を持ってもらったり、注目を集めるような絵を描くことこそグラフィックデザイナーに求められる仕事。
説明のこの段階で既に自分が絵が上手いと思っている人間はグラフィックデザイナーではなく画家をやりたくなるんではないだろうか?
画家、すなわち芸術家で食っていけると美大や芸大の講師、教授、画廊の経営者など5名以上から太鼓判を押されたのならば、ミジンコは絶対に止めはしないだろう。むしろ羨ましいくらいだ。
ただそこまでの金の卵が大学の時点でいたなんて話を聞いたことが無い。
芸術で食っていける人間はそれこそ何十万人に一人もいない世界であり、今日本人の画家で海外でも高い評価を受けている方々でさえ、十数年に渡ってヒキコモリ状態、すなわち無収入だったり(←何度も自殺しかかっている)、途中で生活のために会社員を経験したり、もうすぐ還暦ってあたりでやっと絵が売れたり、そんな世界でもあるのだ。
ミジンコの場合、テナントビルの壁面への塗装などの利用として、自分の絵に値がついたことが数回あるのだが(今のように忙殺されている中で)数ヶ月かかって完成した絵の使用権の完全譲渡が自分の年収の1/30以下なのだから自分に画家の道なんてあるわけもないと思っている。
こういう自慢話みたいなことを自分で言っちゃおしまいとも思うが、高校生に解り易く説明すると、国内だけではなく海外の上場企業からの仕事の依頼が2年先まで埋まっているデザイン広告会社、CG制作会社を経営している自身も現役デザイナーのオッサンが「画家では食っていけない」のだ。だからデザイナーをやっている。
それにしてもハイテク分野、最近では太陽光発電機器向けに使う専門用語の日本語訳でそのまま単語として定着したものの中に結構ミジンコが作り出した言葉があり日経などから問い合わせがあったり、人身売買を告発する機関との協力体制も拡充しなくてはいけなかったり、サメに喰われそうになったり、ワゴン車を倒したり・・・・・忙しくて死にそうだ・・・・・。
さて、
「wiki グラフィックデザイナー」を見ると・・・
グラフィックデザイナーとは、グラフィックデザインを行うデザイナーの事。
グラフィックデザイナーは、アートディレクター、エディトリアルデザイナー、写真家、イラストレーター等を兼ねることも多い。一般に「デザイン」あるいは「デザイナー」という名称は商業デザインを指すため、画家とグラフィックデザイナーは区別される。画家になるためにはグラフィックデザイナーをやめる必要があると考える者もいる。
・・・・なるほど、確かにミジンコもアートディレクター、エディトリアルデザイナー、写真家、イラストレーターを全部兼任しているのは皆さんもご承知のとおり。そうしないと仕事にならないというのが本当のところ。
週末に趣味を謳歌したいような20代を望むのならば、グラフィックデザイナーは目指さない方が無難だろう。
週末は勉強と、人の技術をパクり・・・ではなくて、とにかく手を動かす時間に費やさないとグラフィックデザイナーで飯は食えない。これはどんなに控え目に言ってもそう。
ここまで高校生を萎えさせておいて「一番言いたいこと」、つまり高校生のときに先ずは心がけておくべきこととはなにかというと・・・・・
ベジェ曲線のことでもなく、Adobe Illustratorにどんなプラグインを入れておくべきかでもない。
高校生の内から絶対に身につけておくべきことは「人とのコミュニケーションを上手くやること」もっと具体的に言えば
「人の話を聞け!」ってこと。
何度も注意されているのに、自分が悪いとは思わずに「注意している先生が悪い」なんて考えるクソガキは要注意。
グラフィックデザイナーは、相手がナニを望んでいるのか、どこを修正して欲しいのかを即座に理解するプロでなければならない。不毛な打ち合わせを繰り返すデザイナーは3ヶ月といられない世界なのだ。
勿論、一応はデザインを生業とする者たちでも、何ヶ月も自分の設計ミスで納期を遅らせる“向いていない人”や「できもしない仕事」でも「出来ます!」と答えてしまう自己分析のできない愚か者もいるのだが、そういうデザイナーが生き残れている理由、いや正確には業界にしがみついている理由はごく単純。彼等は安い。
安いから頼むという依頼主は確実に存在する。問題はそういう仕事をしているデザイナーはもっと安いデザイナーに簡単に仕事を奪われてしまうこと。そして最安値のデザイナーたちは仕事があっても採算が合わなくなり廃業する。
こういう問題のある、ちょっと言葉は悪いが底辺のデザイナーたちの共通した短所が「コミュニケーション能力」であることは間違いない。
クライアントの望んでいないデザインをしてしまうこと、設計ミス、相手が求めているデザインの高度さを理解できていないこと、絶対厳守すべき納期、その他諸々、全て自分に依頼をしてくれたお客さん、間に立つ広告代理店の担当者の言葉などをちゃんと理解していれば、起きるはずもないような問題ばかりなのだ。
結局のところコミュニケーションが上手くいっていないということ。勝手に思い込んで仕事をしてしまうようなタイプが特にヤバい。
はっきり言ってしまえば顧客と直接話しておいて、顧客が望んでいないデザインなどしてしまうようなデザイナーはそもそも職業選択を間違っている。
コミュニケーションの能力というのは元々の性格のせいにすべき部分ではないとミジンコは考える。
なにしろ別に面白いことを喋れって言っているわけではない。単純に前述のとおり、人の話を聞いて、相手がなにを望んでいるのかをしっかりと把握するだけでいいのだ。
これは訓練(慣れ)でなんとかなる。とにかく聞く。そして自分が理解できなかったところはちゃんと聞き直す。
自分がどうしたいかではなく、相手がなにを望んでいるのか、それが理解できる人間になる練習は高校生の内からしておいて損はない。
絵が上手いとか、なんとなく今風とか、そんな要素は大したことではない。
打ち合わせがちゃんとできて、依頼主の望みに最も近いデザイニングをして、納期は確実に守ること、これがグラフィックデザイナーに最も求められている資質。
実はグラフィックデザイナーってのは皆さんが思うよりも遥かに24時間戦うサラリーマンなのだ。相手の話を聞かない奇人変人なんて一線級にはいない。
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