1年ほど前に書いた
「安易に原発即時ゼロを主張してこの貿易赤字を無視する無責任さ」という記事への反響が大きかった。長年に渡り原発を肯定しておらず、代替エネルギー開発推進派である当ブログの管理人が「原発即時全面廃炉」には賛同できない理由を述べている記事だ。火力発電所でさえも化石燃料を燃やして電気エネルギーを生み出している。そんな簡単な理屈を理解できれば、代替エネルギーが原発ほどのエネルギーを簡単には生み出せない現状での原発即時ゼロは日本経済にとっては深刻なリスクとなるということだ。リスクくらいで済めばまだしも現実的には燃料コストに苦しみぬいた企業群の連鎖倒産の続出だろう。何度も述べているが、人は貧しくとも死ぬのだ。原発にリスクが伴おうともすぐに人は死なないが、貧乏、もっと具体的に言えば経営破綻や就職難による生活苦や絶望によっても人は命を絶つということだ。そんな数ヶ月後には起きるやもしれない多くの死を回避することこそが国の努めというものだ。その貧困による死が防げるのであれば、やはりリスクが伴おうとも石油を輸入して火力発電所を動かし、道路、鉄道などの輸送機関を動かすべきであるし、原子力発電所を維持することも賢明な判断だ。そういう思いを込めて書いた1年前の記事が反響が大きかったことは当ブログの誇りであるし、記事によってなぜに原発即時ゼロが大きなリスクが伴うのかを貿易赤字によって理解できたとの声が多数あったことが有難かった。今もって安易に原発ゼロや再稼動をひたすら批判する政治家や活動家たちは一切この莫大な貿易赤字については触れない。その事に触れないで安易にエネルギー問題を語ることこそ無責任極まりないことだ。
下記の元官房長官の国会での弁をご覧いただきたい。本気でこんなことを述べている大人がいることが信じがたいがこれは合成写真ではない。こんなことを国会の場で語る男が官房長官だった時期が確かにあったのだ。そりゃ石油の供給がストップしたところで日本の場合は備蓄が尽きるまでの大体3ヶ月はなんとかなるだろう。ではその備蓄が尽きたときはどうするのか?
そりゃホルムズ海峡を日本どころか世界中の船舶が渡れなくなったとして国民は即死はしない。これは原発事故当時の「ただちに(危険ではない)」と同じことであり、どちらにしろ深刻な悪影響がある事態だ。石油が使えなくなろうと、被曝しようとも、ただちに死なない。言うまでもなく、議論の中核は即死なのか、後々苦しむことになるのかではない。この元官房長官は毎度のこと論点をズラす。本当に卑劣な男だ。
海上自衛隊の機雷掃海技術は世界屈指のものであり、まさに適材適所としてホルムズ海峡の機雷掃海を世界が求めているというのが実際のところだ。そこで技術を更に上げる海上自衛隊、そして(異論はあるだろうが国家規模として)大国としての役目を果たしている日本が世界から賞賛されることは、自衛隊大嫌いで今の政権与党のポイントとなることを阻止したい野党からしてみれば、国民の利益云々は関係なくホルムズ海峡での掃海活動は食い止めたいのだろう。まったくもって馬鹿馬鹿しい話ではあるが、野党は国民の命なんて考えているわけではなく、単に自衛隊や与党が活躍して世界的評価が上がることが嫌なだけだ。
言うまでもないが日本への原油供給が停止すれば、この愚かな元官房長官が言うような「(国民が)快適な状況が送れなくなる」といった程度の不便さで済むわけがない。燃料が足りなくなるといった単純な話で収まるわけがないからだ。今の日本で化石燃料が不足し、電力供給がままならなくなれば、経済活動が低迷どころか停止状況に陥り、我々がお金を稼ぐ術すら失う。原発事故後の計画停電中でさえ中小企業の倒産が相次いだというのに期限の見えない化石燃料不足がどれほど深刻なダメージを日本経済に与えるのか、そんなことも想像できないでこの元官房長官は国会でこのクソッタレなパフォーマンスだ。
危ないところだった。こんな男が官房長官だった時期があったのだ。原発事故という悪夢が起きたものの、それでも日本は倒れなかった。しかし、今思えば、民主党政権時代は企業も国民も青息吐息ではあった。あの頃は最長でも4年で次の衆院選があるということを希望にして国民が踏ん張っていた感がある。本当に危ないところだった。
[50回]
PR