どうもアシアナ航空ではそれがまったくもって理解されていないようなのだが、航空会社の客室乗務員は保安要員なのである。乗客への飲み物や食事の提供や機内の清掃など様々な仕事があるとはいえ、客室乗務員はあくまでも保安要員であり、ホステスのような仕事とはまったく異なる「人の命を預かる」という重責の下、日々の業務に就いている。日本の航空各社ではこのことを徹底して研修期間中にCA候補生たちに教え込んでおり、研修では保安業務についての訓練に最も重きがおかれている。海外の航空会社では水上着陸を想定してCAたちの採用基準にある程度の水泳能力を求めている。実際にハドソン川の奇跡のような事例もあるので水に落ちた乗客を救助する能力が求められているのだ。日本の航空会社のCAたちも様々な能力が求められているが絶対に欠かすことができない能力は不測の事態が起きたときにパニックにならずに冷静に状況判断する能力だ。そしてその為の徹底した訓練だ。国内のCAたちは夢に出るほどの反復練習をしているからこそ、いつの時代でも事件や事故が起きた際のCAたちの勇敢な対応が伝えられ賞賛されている。
そもそも国内ではCA(キャビン・アテンダント)と呼ばれることが多い客室乗務員だが、英語圏ではそういう呼び方はしない。客室乗務員を直訳するとそういう呼び方になるのだろうが、英語では「フライト・アテンダント(Flight Attendant)」と呼ぶことが一般的。キャビン(客室)を使う場合は、キャビン・クルーだろう。客室担当の乗務員ということだ。CAだとまるで客室のホスト作業のみに従事している担当者のように聞こえるので実は余り良い表現ではない。本来、客室乗務員はクルー(乗務員)であり、最も優先されるべき仕事は乗客の安全確保なのだ。単に航空機では事件も事故もほとんど起きないが故に保安要員としての仕事を行う機会がないだけのことで、日々CAたちは保安業務の必要がない時に他のサービスを行っているということだ。
保安業務と漠然と言うには簡単だが実際には大変な仕事だ。有事の際には乗客を落ち着かせ、毅然とした態度で客室全体に響き渡るほどの大声で乗客に指示を出さなければならない。酸素マスクを正しく装着させ、脱出時にはスロープまで何百人もの乗客を誘導しなければならない。外の救出チームに正確な情報を伝える必要が生じるときもあり、またパニック状態となった乗客がいたとしたらそれを制止しなければならないのだ。勇気を振り絞るという意味で最難関の仕事だろう。
「乗務員が誘導する様子は見られず、やがて開いたシューターを使い、乗客が助け合って脱出した。」←これは
着陸10分前、突然大揺れ「吐きそうになった」(Yahoo!ニュース 読売新聞)という記事の最後の一文だ。広島空港でのアシアナ航空の着陸事故についての報道だ。同様にしてテレビ局のインタビューでも乗客たちはアシアナ航空の客室乗務員たちの狼狽ぶりを語り、乗客同士が助け合って機体から脱出したと証言している。客室乗務員たちはパニック状態で、あろうことか乗客たちの誘導という最もなすべき職務を放棄していたというのだ。

これがアシアナ航空の実態だ。冒頭から述べているように、客室乗務員たちは保安要員であり、あらゆるサービス業務よりも優先して乗客の安全確保・誘導に努めなければならない。ところがアシアナ航空の客室乗務員たちは乗客そっちのけでパニックとなり、自分たちの職責を放棄したのだ。しかも乗客の証言の中にはハッチ(扉)が開かないと騒いでいる客室乗務員がいたというのだ。緊急時の扉の開閉に苦労する乗務員?なぜそこですんなり扉を開けなかったのか?普段の訓練はどうなっているというのか?
アシアナ航空はサンフランシスコ空港での操縦ミスによる着陸事故後、パイロット養成過程に重大な不備があることを事故調査委員会より指摘されている。今回の広島空港の事故もまだ調査中とはいえパイロットの操縦ミスによる人災である可能性が濃厚だ。それに加えて客室乗務員たちが乗客を誘導すらしなかったことが判明している。いったいどれだけ無責任な組織なのか、呆れる以上に恐ろしささえ感じる。こんな組織が航空会社を運営できるのだろうか?と。
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