もう知り合って10年ほどになる女性がいる。彼女に最初に会ったときは彼女がまだ学生だった。
東大の3回生で芸能事務所に在籍しているという東大タレントの走りのような感じだった。
大学卒業後に再び国立の医大を受験して医師を目指したいとのことで、再度、受験生になった彼女。とにかく起きているときはずっと勉強という感じだった。
そんでもって勉強が辛くなるとミジンコに連絡が着て、ミジンコが罵倒するという繰り返し。
東大卒だろうがなんだろうが「バカヤロウ」と言うミジンコが憎いやら悔しいやら、それでもこのままでは終われないとミジンコとの接点は維持する彼女はなかなかの根性の持ち主だったのかもしれない。
いったいどこまで勉強すればいいのか解らなくなり辛くて泣きながら電話してくる相手に「泣いている暇があるなら勉強しろ」と言った記憶がある。随分酷いこと言ったものだと思う反面、今同じことが起きても同じことを言うと思う。
外資系の過酷な環境で東大だろうがMBA取得者だろうが、廊下で1分だけ泣いてデスクに戻る女性たちを山ほど見てきたので、周囲の女性が泣くことに感性が鈍っていたとは思う。
自分で選んだ道ならばそこで泣いていること自体がナンセンスだとは今でも思う。
さて、ちょっと話が横道にそれるのだが・・・
以前、Yahoo!ブログ時代に書いた
「派遣も辛いが正社員も辛い」という記事の反響で記事に好意的な意見が大勢なので若干驚いたことがある。
派遣社員にとっては厳しいことを書いたのだが、コメント欄は賛同意見が多数。ミジンコとしては派遣社員の方々が咬みついてくるのかと思いきや、全く逆でむしろ同意見の方々ばかり。
つまり、皆さん、「収入も住居も突然失って窮地に陥った派遣社員たちの過去を振り返ると自業自得な部分が無いとは言えない」という意見なのだと感じた。ミジンコもそう思ったので記事にした。
なんでこんな話を蒸し返したかというと、ミジンコも今回登場した女性も“ほとんど青春を謳歌しないで大人になった人生”を歩んでいるから。
我々は20代のほとんどを勉強と仕事に費やしている。遊びたくなかったわけでもはなくて、そういう人生の選択をしないことには成りたい職業に就けないというのが現実だったから。
今、テレビなどのインタビューで恨み節を語る元派遣社員たちの一人でも青春をスキップした人々の人生があるということは知って欲しい。
今、住む場所や定収がある人々がなにも失っていないでラクして今の立場にあるわけではない。人生でどの選択をしたのか?ということに尽きる。
それでは話を戻すと・・・
今回、彼女から1年ぶりに連絡があったのは、同窓会で着ていくドレスを買うのでアドバイスが欲しいとのこと。
ミジンコは仕事柄そういうことには詳しいので彼女が訊いてきたわけだ。医学部に通学しながらした塾講師のバイトでやっと高めのブランド物のドレスを自分で購入できるようになったとのこと。
最初はメールでのやり取りだったが彼女が選んだ第1候補を試着してみたら思ったほど似合わなかったとのことで、ミジンコがドレスでは大のオススメの
ダイアン・フォン・ファステンバーグの
南青山の直営店(リンク先の記事が大変興味深いのでリンク。店内の写真が見られます。)に同行することにした。
その店はミジンコの会社から歩いていける場所。プラダやカルティエなどの有名ブランドが住宅や学校がある場所に点在する住宅街なんだけれどもファッションの中心地のような不思議な場所。
ブラ見というよりかは本当に買う客が店に入る、そんな雰囲気がある地域。
30歳でやっとパーティーを楽しもうという気分になれた彼女。とにかく勉強とバイトの日々なのでパーティーどころでは無かったというのが本当のところだろう。
素直に自分がブランド物に詳しくないからミジンコに教えて欲しいという姿勢は賢いと思った。なんでも最適な行動を選べるのは生きるセンスの良さだと感じる。
それにしても30歳まで我慢していたわけだ。そういえばミジンコも1杯の値段を気にしないでバーに行けるようになったり、ワイシャツを既成品にしなくなったときに「俺、大人じゃ~ん!」って思ったわけだが、それが30歳の頃。
20歳で大人なんて嘘だ。30歳から大人なんだ!・・・・・と言ってみたくもなる。
ドレス選びはダイアン・フォン・ファステンバーグのチーフスタッフが担当してくれた。
こう言ってはなんだが有名ブランド店のいくつかには客を見定めて対応する者もいる。なんというバカバカしいことだと思うのだがこれも現実。
少ない可能性とはいえ、そういうリスクがあるのでミジンコは彼女のドレス選びに同行したわけなのだが、最初から懇切丁寧な対応であり、これぞ一流ブランドという感じがした。ドレスに革命を起こしたダイアン・フォン・ファステンバーグの意思は店舗スタッフたちにちゃんと引き継がれているようだ。
不慣れな彼女がドレス選びに最大限集中できるようにする配慮のあるスタッフだった。こういう店でなら他の女性も紹介しようと思う。
恐らくこういった一流ブランドの店舗スタッフたちも覚えることが次から次へと津波のように押し寄せて大変なことだろう。
3ヶ月おきにデザインが一新される世界だ。それでもキャリアを積むために精進しているのだろう。
どんな仕事も大変なものだ。ラクな仕事なんて無いとつくづく思う。
別に20代を捨てろとは言うまい。
ただ、文句だけを言う人生ってなんなんだろうなって思う。
住む場所を失うことは不幸だ。収入を絶たれることも不幸だ。職場にもういらないと言われることには絶望するだろう。ミジンコが同じ立場でもそうだろう。
ただ呪うよりかは仕事探しだ。ミジンコならそうする。住所がなくても、身分証明書がなくてもできる仕事を数々やったから言える。
そこで金を稼いで脱出するしかない。生きたいのならば。
妙な嫉妬をされることもあるミジンコなのだが、自分の過去を説明する気力さえ湧かない。心底「この馬鹿には言っても解らないだろうな」って思うからだ。
さて、定収も(コタツには入れないが)住む場所もあるミジンコ。
2ヶ月前に「このウジムシが!」と言われ鬼軍曹に沼に叩き落とされた。本番で生き残る為とはいえ厳しかった。
一流の戦闘のプロたちと一緒に行動するにはミジンコはまだまだクオリティー不足ということらしい。その通りなので反論できない。ずっとこのままでいる気はないが。体中の傷とマメが毎年増えている。
これが人生。
ミジンコも感動した素晴らしいドレスを選んだ彼女。第一志望は産婦人科医。
来年、都内で産婦人科の医師の卵として活躍することだろう。
産婦人科を選んだのは言わずもがな。
30歳まで我慢に我慢を重ねてミジンコに言った唯一の願いが「ドレスを一緒に選んで欲しい」って人が、社会情勢も鑑みて、家族やミジンコの反対(法整備が不十分なので!)産婦人科を選んだのだ。
自分の過去は顧みないで企業を呪う人々もいれば、こういう女性もいる。繰り返しになるが、人生でどの選択をしたのか?ということに尽きる。
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