劇場公開中。
映画祭での記者会見で監督自身からではなく監督が所属する制作スタジオの社長が発表。
過去に数回引退発表をしているが撤回している。
その監督作によって莫大な利益を享受しているテレビ局がその何度目かの引退発表をニュース速報で流す。
そしてそのテレビ局がひたすらそのニュースだかなんだかも分からないようなことを速報として取り上げている。速報と称しつつも映画の宣伝でしかない。
この時期の監督の引退発表で劇場への駆け込み需要は少しは拡大したことだろう。熱狂的なファンは再び劇場に足を運ぶやもしれない。
賞への影響は分からないが功労賞としてのなんらかの受賞を促したかもしれない。
なんだろうなぁ、この違和感というか、こちらまで恥ずかしくなるような感覚は・・・・・。
かつてスタジオジブリというものが設立される前には宮崎駿監督の大ファンだった自分が何度目かとはいえ同監督の引退発表について悲しさよりも呆れる感じがすることは大ファンだった当時の自分では想像もつかないことだ。
最近の宮崎監督の言動はとても支持できるものではなくてむしろ日本人を貶めるような数々の言動には怒りを覚えていた。それと作品は別物だと考えたくはあったが何度CMや宣伝のための番組を見てもどうしても映画館に足を運ぶ気になれなかった。年間50回は映画館に足を運ぶ人間、つまりメジャーな劇場公開作の多くを映画館で観ることにしている人間が避けたということ。そのくらい今公開中の作品の宣伝のやり方には嫌悪感を覚えた。そしてトドメの引退発表だ。
「未来少年コナン」に夢中だった頃には監督の名前すら知らなかった。子供のときはそんなことは気にしていないものだ。テレビでやっていた「カリオストロの城」に痺れた。たまたま夕方のテレビでやっていた当時でも古い映画だった「太陽の王子ホルスの大冒険」のアニメーションのスムーズさに驚愕した。アニメで大エンターテイメントがあるなんて子供ながらに感動した。石の巨人の手のひらがバンと大地を叩く描写、その迫力に描いた人は天才だと思った。氷のオオカミたちの下半身が流れ星の尾のようになっている表現、これも天才だと思った。あとでこれら全ての作品が同じ作画担当者の場面設定(レイアウト)であり監督作品もあると知り納得がいった。ルパン3世で格段に面白かった大型飛行船が出てくる回(死の翼アルバトロス)と最終回(さらば愛しきルパンよ)まで同じ監督だった。なんだろうか、よく尊敬する人を神と表現することがあるが自分にとっての神様はこの人だと思った。「風の谷のナウシカ」は初めて監督で選んで観た作品。3回新宿コマ劇場の向かいの映画館に向かった。中学生以下の料金とはいえ春休みに3回はきつかった。おこずかいをはたいた。「天空の城ラピュタ」でもそりゃもう何度観ても胸が躍るようなシーンが数多くあり監督の次回作を今か今かと待った。ト、トトロは・・・・今観ると嫌いではないが、冒険活劇を期待していた少年だったので若干ションボリした。更に同時公開の「ほたるの墓」で幽体離脱するほどショックを受けた。
自分が年齢を重ねたということもあるだろうがそこまで尊敬していた監督が引退するときにはもっと淋しいだとか悲しいだとかの感情がくるものだと昔は思っていた。十数年だろうか。本当に長い期間、もう何本もの宮崎駿監督作品にそれほど感動もしていないどころかむしろ失敗作のような印象を受けてきた。自分の地元である東小金井にスタジオジブリが移転してきたときには大喜びしたものだが、そういえばその移転以降の作品で1度も前の段落で述べたような感動を覚えたことがない。カリオストロやナウシカで感じたような驚きや心が躍ることがもう長いこと宮崎駿監督作からは感じたことがない。そう考えると自分は宮崎駿監督作品のファンとはいえ、スタジオジブリ作品のファンではないということになる。
なんともあれだけ好きだった作品の数々を作ってくださった恩人の引退がここまで悲しくないことが悲しい。
[24回]
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