シャープの太陽光発電機器のCMに11年も起用されているという吉永小百合さんがCMの中で「11年のCM出演歴があるが遂に自宅にソーラーパネルを設置した」といった内容のことを述べていた。その部分が今はカットされているらしい。どうも世間の反響は「11年もCMに出演していたのに今までソーラーパネルを使っていなかったの!?」という驚きが大きかった模様。なんだかホッとした。自分もあのCMを見たときの第一印象が同じだったので。
吉永小百合さんの自宅が一戸建てではなくてマンションタイプである場合はご自分だけの判断でパネルを設置することができなかった可能性はあると思う。そうは言っても11年もの長きに渡りソーラーパネルのCMキャラクターをやっていて実はつい最近やっとその製品を使い始めたという事実はいささか衝撃的だ。自分が使っていないものを他人に買えと言っていたということだ。しかも11年もだ。
勿論、CM出演者がその宣伝対象の製品を購入しなくてはならないという規則があるわけではない。広告主である企業がCMに起用した人物に製品を提供しなくてはならないという規則があるわけではない。もうこれはモラルの問題だ。残念なのは脚本(絵コンテ)の段階で関係各位の誰もあの「11年」のくだりを指摘していないことだ。流石に11年もCM出演している人物の台詞としては1回聞いただけでおかしいと思うはずだ。
こういう議論になってしまうとクルマのCMに出演している人物がそのクルマに乗らないとならないのかとか、CM出演者が競合他社製品を使用してはならないのかといった話の本質から離れた枝葉の話が次々と出てきてしまい収拾がつかなくなるのかもしれない。だが、大人ならばある程度の線引きというものはできるはずだ。要は前述のようにモラルの問題であり、一番感じることは「萎える」ということだと思った。コカコーラのCMに出演している人物がペプシコーラを飲んでいるところをパパラッチされたらCM契約は解除されるかもしれないが物凄く悪いことをしているようには感じない。ちょっと冷めた目で「まぁ、そういうこともあるよね」くらいにしか感じないことだろう。11年もCMに出演している人が実はその製品を使用したことが無かったことに視聴者は萎えたってことだろう。
皆さんご存知のようにミジンコは太陽光発電機器に使用する半導体素子の研究開発に長いこと携わっている。簡単に言えばハイテク技術への投資だ。そういう立場なので太陽光発電機器の普及はそれ即ち自分への利益につながる。そして太陽光発電機器の導入については個人宅から企業まで頻繁にご質問を受ける。今、パネルを設置するべきか否か、誰もが悩むところなのだろう。答えはミジンコにも分からない。トータルの収支を計算できないからだ。パネル設置後、パネルが老朽化して機能しなくなるまでの十数年でどれだけの日照時間が予想されるのか大まかでもそんな天気予報は出しようがないし、設置場所の砂埃がどれだけのものなのかも分からない。そもそもメーカーによっても機器の性能、耐用年数が異なるであろうし、単にエネルギー変換効率の向上と機器に使う素材の小型化・薄型化をして材料そのものの低減を目指している者であるミジンコに「パネルを設置するべきか否か」の質問をしたところで予言レベルのことしかアドバイスできないのだ。
つまり現状はパネル設置によって本当にお金が節約できるのかどうかは分からないのだが地球環境保全については意識の高い行動かもしれないが、実はそうではないかもしれないといった事なのだ。だからこそ善意によってパネル設置を決断して数百万もの買い物をしている消費者、そしてこれから決断しようとしている人々の気持ちを萎えさせるようなことを製品販売ではなく素材開発側の自分でさえ思う。シャープも吉永小百合さんも、そして一番責任の重いCM製作者と広告代理店はもっと自分たちがなにを、そしてどれだけ高額なものを売ろうとしているのかその責任を噛みしめるべきだ。
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