理研・笹井副センター長が一連のSTAP細胞についての会見を行った。論文にはSTAP現象が存在しないとすると説明のつかないデータが存在するので、STAP現象は検証すべき合理性の高い仮説だと説明した。STAP現象は検証に値する仮説だということだ。
仮説と述べていた。これでSTAP現象はある可能性が高いが無い可能性も含めた仮説であるとなった。小保方さんやバカンティー教授がいくら「STAP細胞はある」と断言したところで毎回その証明抜きなので信用するのは無理というものだ。仮説の為に世界中が右往左往したということだ。本当に残念だ。
研究側にそこまでの法的な責任は無いとはいえ、人間としての責任があると感じることがある。難病、特に臓器移植に望みをつないでいる人々のことだ。過去形で言うのもなんだがSTAP細胞が現実のものであったならばどんなに良かったことだろう。STAP細胞のニュースが流れたときに再生医療に光が差し込んだ。人体の免疫機能によって排除されることのないまさに自分自身の細胞で臓器細胞が再生できるのだとしたら現在の難病の数多くを人類は克服できる可能性が高い。だからこそiPS細胞は賞賛され期待もされている。iPS細胞よりも容易に作成できるとされたSTAP細胞ならば治療が間に合った人たちがいたかもしれない。命への希望を与えて落とすなんて法的には責任が無くとも人として最低最悪なことをしている。
ひとつまるで取り繕うような言葉で説得力に欠けるかもしれないが述べておきたい技術の進歩の話がある。STAP細胞が無くとも絶望することはまったく無い。4ヶ月ほど夢を見させて貰ったが別にiPSをはじめとする他の再生医療テクノロジーが停止したわけではない。むしろそれらの技術はこの4ヶ月も着実に進んでいる。そして技術促進はスピードが倍化どころか数倍化するときがある。それは一見直接関係ないような技術革新が起き、結果的にその技術革新が連鎖的に再生医療の研究の大きな助けになることがある。スパコンなどはまさにそれだ。今や批判の渦中にある理研はあのスパコン「京」よりも1000倍速いスパコンの研究に取り組んでいる。これはできるかできないかの問題ではなく必ずや実現する研究だ。
最近はよく耳にするであろうビッグデータはいわば世界の情報共有だ。今までつながることのなかった情報同士がビッグデータによって双方向でつながり共有できる可能性が日に日に高まっている。再生医療に於ける革新的なデータが実は埋没していたものの、それが発見される可能性は数年前とは比較にならないほど高まっている。世界を変えるデータは意外にも機密情報扱いされたファイアーウォールの外側に眠っている可能性がある。今まではそれを見つける手段が無かったこともこれからはネット検索をする程度の労力で実現してしまう未来がある。
あまり一般的な話題にはならないが医療チームの技術の向上は凄まじいの一言に尽きる。かつては想像もつかなかった高度な手術が年々当たり前の手術となっている。執刀医の技術が格段に向上しているのだ。勿論、そういう執刀医は私生活を犠牲にするほど技術向上に人生を捧げているのだから、それに甘えるだけではなく技術革新を起こす側のミジンコたちもやることはやらねばならないのだが、お互いに望んで選んだ人生だ。人間の手先では不可能な微細な動きを実現するロボットがある。まだ操作のできる医師を育てていくという課題はあるがそれはやってできないことではない。非常に高額なロボットも生産台数の増加などスケールメリットが実現すれば価格の低減は可能だ。ロボットだからこそ可能な手術は今までできないとされてきた手術も可能とする。
ナノテクノロジーも進歩している。ナノサイズの治療カプセルやロボットの研究が進んでいる。再生医療とは異なるが再生医療しか望みが無かった症例についても今まではできなかった体内の患部への直接的な投薬、抗がん剤投与などにより進行を遅らせる効果が期待できる。ロボットもそうだがナノテクで病気の進行を遅らせることには大きな意味がある。STAP細胞がなくともiPS細胞は確実にあるのだ。山中教授は「まだ誰も救っていない」と述べて研究開発に集中しているがいつか必ず「iPSが間にあった人」が生まれる。
STAP細胞の有無は笹井副センター長の会見でも分からなかった。なぜ最短で7日間で作ることができるというSTAP細胞をあると主張する研究者たちが見せようとしないのかは分からない。この騒動に注目するよりも他の再生医療技術に目を向ける方がよほど有意義なことだ。1年後にSTAP細胞が本当にあったと証明されても誰も困らない。むしろその医療技術を待つ人々には朗報だ。STAP細胞が無かったとしても再生医療の歩みが止まるわけではない。STAP細胞の一連の騒動がどう決着しようとも肝心なことは研究者も投資家も歩みを止めないことだ。その止めない歩みが大切なのだ。
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