ウクライナ情勢が悪化の一途だ。一昨日、ウクライナで親ロシア派の住民が4名死亡した。ウクライナは遂に軍を動かし、特殊部隊が新ロシア派住民に占拠された空港の奪還に動いた。ロシアは国連安保理の場に於いてもとぼけたことを言ってロシア軍もロシアの特殊部隊もウクライナ国内の警察署や空港を強奪していることを認めていない。ロシアの民間軍事会社が採用し、ロシアの正規軍も使用している最新型の迷彩服を着た部隊がウクライナ国内の警察署に突入して占領しているというのに、ロシアは国連安保理でそれを関知していないという笑えないボケをかましている。だったらウクライナ軍がその部隊を排除してもロシアは関知しないというのだろうか?この21世紀に武力による侵略が易々とまかり通ると考えているロシアはまるで暴走車だ。やっていることがまるで当たり屋のそれで、自分たちがウクライナ国内の市庁舎、警察署、空港などを武力で占拠しておいて、それに参加しているロシア系住民の安全確保を理由にロシアはウクライナに対して軍の介入を正当な権利のように主張している。そんな馬鹿な理屈が通るか!それではどこの国も血統の基となっている国が「~~~系の住民を守るため」と称して軍事侵攻できることになる。多民族国家には主権なんて無いという世界をロシアは望んでいるようなものだ。
ロシアは一見強気に見えるが今は冷や汗ものだろう。既にプーチン大統領でさえロシア軍と親ロシア派の住民の警察署占拠などの暴挙については制御し切れていないことは明白だ。始めてしまったらその始めた張本人でさえ思うような状況にならないのが戦争だ。ウクライナ1国でも世界のどの国でも完勝するような戦争は不可能だ。ウクライナは旧ソ連を支えた強力な軍事力を有しており、いくらロシアの軍事力が強大であろうとも、アメリカ軍が先頭に立って行う多国籍軍が中東の国々の首都にまで短期間で侵攻するようなワンサイドゲームのような様相にはならないことだろう。ウクライナが勝てるとは言わないが負けるといった戦争にもならない。そしてウクライナの後ろ盾はNATOとアメリカだ。今本当に戦争を一番やりたがっていない国はロシアのはずなのだが引き際を完全に見失ってしまった。ロシアにとっては悪夢のような展開だ。本格的な戦争になってしまったらウクライナよりも先にロシアが吹き飛ぶ大誤算だ。それもこれも原因はウクライナの主権なんぞ無視して暴れ出したロシア系住民、いわゆる親ロシア派なのだが彼等が先のことまで考えて動いているようには到底見えない。そもそも理性的な生き物は警察署を襲わない。
日本でのネットの書き込みなどを見るとまるでロシアがとても壮大な深慮遠謀に沿って行動しているかのような分析をしているニワカ評論家たちがいる。愚か過ぎて笑えない。IMFはウクライナの悲願であった兆単位の莫大な金融支援を受けることが決定したのだ。その状況をロシアが作ったのだから既にロシアの計算違いは致命的だ。元々はウクライナのロシアの傀儡政権が汚職と不正に塗れていたところでウクライナ国民の怒りが爆発して、それを好機と見たアメリカやEUが革命を支持し支援。みすみすクリミア半島を含めたウクライナを丸ごとEUに取られて隣接国家が親米になることにロシアが怒り焦ってクリミア半島を先ずは確保して黒海での影響力を維持しようと動いたところまではまだロシアも制御が効いていたように思える。ところがロシア製のものは製品だけではなく侵略計画までも大雑把だった。ウクライナ国内の親ロシア派や親ロシア派にシンパシーを感じているロシア軍をロシア政府は制御できていない。
ロシアからしてみればもう早めに止めたいウクライナ国内各地で起きている親ロシア派の活動とそれを支援しないわけにはいかないロシア軍という状況は自爆用の爆弾の導火線に火を点けたようなものだ。今ロシアがウクライナ国内の親ロシア派に対してハシゴを外すようなことをすればそれこそロシア崩壊の始まりとなる。独裁国家は我慢に我慢を重ねてきた国民の信頼を失った瞬間に雪崩式に崩壊することは歴史が示している。
前述のように現実としてロシア軍はウクライナ軍よりも強いのかもしれないが簡単に勝てるほどの差があるわけでもない。それに加えてNATO軍とアメリカ軍だ。日本のニワカ評論家たちはNATO軍やアメリカ軍が動かないと断言しているが全くそんな根拠はない。ロシアの弱体化を望んでいる国がどれほどの数に及ぶのか、それを考えれば西側諸国の容赦のない攻撃は容易に想像できる。リビアのカダフィ大佐の悲惨な最期を見たときに欧米諸国のえげつなさを見た気がした。まるで見せしめ処刑だった。シリアのアサド政権を打倒する為にNATO軍の空爆による猛攻撃。シリアでは3つものお互いが決して良好な関係ではない反政府軍が存在するという反政府軍にも必ずしも正義があるとは言えない中、NATO軍はとりあえず親ロシアのアサド政権を叩き潰すことは躊躇していなかったのだ。ここのところずっと西側はプーチン・ロシアの面子を潰してきたのだ。だからこそロシアはまさにキレたかのように今暴走しているし、超えてはいけない線を越えたら自分たちが次は西側の餌食になると焦っているのだ。
戦争はどこにも正義などなく、始めればメリットがあると考えた国家が自国民にも相手国民にも凄惨な犠牲があろうとも始めるものだ。日本のニワカ評論家たちはロシアが上手くやっているかのようにさえ伝えるが全くもって状況を分かっていない。オセロをやってみて頭を冷やすべきだ。西側に次から次へと大義名分を与えてしまっているロシアのプーチン大統領やラブロフ外相の表情を見ればどちらが今、裏返してはいけないオセロの石に触れてしまったのか簡単に分かる。西側にしてみればウクライナ暫定政権が倒れようとも、もはやウクライナが親ロシアになる可能性が無くなったのだから後はロシアにいくら罪を被せるのかという算段に入っている感すらある。現在のウクライナ暫定政権が弱腰だと国民の信頼を失って台頭するのは更なる極右勢力だ。既に1万名を超えるとも言われる極右勢力の民兵が戦闘準備に入っており、彼等はウクライナ暫定政権を批判している。ロシアにしてみれば同じく戦争を回避しようとしているウクライナ暫定政権が倒れないことを祈るしかない。もしウクライナ暫定政権が倒閣され、極右政党がウクライナ政権の座に就いたらロシアはアフガン撤退よりも後悔する戦争を始めることになる。しかもアフガニスタンの武装勢力へは西側の裏からの支援しか無かったが今回は状況が異なる。NATO軍もアメリカ軍も公に軍を展開できる大義名分を得ている。
第3次世界大戦になるとは思っていないが既にウクライナは事実上の戦争地帯だ。戦争の始まりとはそれほど綿密な計画が裏にあるわけでもなく、想定外のことが連続して起きて誰も止められなくなるものなのだろう。最近のネットではそれこそロシアが軍の使い方(誇示の仕方)が上手いだとか、やたらとプーチン大統領を賛美する声もだいぶ見てきた。現実はまったくもってそういうニワカ評論家たちの願望とは異なる。プーチン大統領がだいぶ大人しくなってきた。今回の落としどころを自分ではどうにもできないことを分かっているのだろう。それが現実だ。
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