メールを送った側も受け取った側も笑えないどころか青ざめる事態なんだろうが、部外者の自分としては申し訳ないが笑ってしまった。ウェブで保険加入状況の再検討の相談を無料で受け付ける「みんなの生命保険アドバイザー」が先月27日、過去の利用者約2,000人に送信した宛名がなんと「ブラックリスト様」だったのだそうだ。保険会社の方としてはこのメールを受け取った受信者とブラックリストとの関係性を完全に否定しているが、この言い訳がかなり苦しい。保険会社としてはそう言わないわけにはいかないのだろうが、この約2,000人の受信者はなんらかの同一カテゴリーとして登録されていたであろうことが透けて見えているわけで、そのお客様情報の格納先の名前がなんであったのか想像に難くない。いやはや一括自動送信の恐ろしさとはこういうことなのだろう。
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メール誤送信:宛名「ブラックリスト様」 保険相談サイト(毎日新聞)
保険の無料相談の実態が見えてくるので興味深いミスだ。こんなことは営利目的で動いている企業としては当たり前のことではあるのだが、無料にはなんらかの意図があるということだ。相談は無料ではあるものの、そこから先の新規の保険契約は無料のはずがなく、その新しい契約が見込めないようなお客様は結局のところお客様ではないということなのだろう。その事に関して特に文句を言うつもりもない。保険販売だって商売だ。利益を上げなければ立ち行かなくなるということは承知している。
別にブラックリスト自体も珍しいことではない。ブラックリストを作って同業者同士でその情報を共有したり、従業員へ周知させて次のモンスターたちの理不尽なクレームに備えることは企業が生き残るためには必要な措置だ。なにしろここ数年で聞くお客様と称したモンスターたちの暴れっぷりはもはや本物のモンスターである大怪獣たちよりも破壊力がある。客や常連と称して店や企業を叩き潰そうとしているとしか思えないような無理難題を要求し、ストーカーのごとくネチネチと粘着してくるブラックリストにいる人々の傍若無人ぶり、皆さんも聞き及んだことひとつやふたつではないことだろう。大変な世の中になったものだとつくづく思う。
この保険相談の誤送信については弁護するつもりもないが、企業がこういうブラックリストを作っていることをもっと広く認知させていく必要を感じる次第だ。「ブラックリストなんてけしからん!」と怒ることは容易いが、「ブラックリストを作らざるを得ない」と企業に考えさせる状況を利用者側も受け止める必要がある。本来はそんなリストが無くて済む状況が理想だ。
この保険相談のブラックリストがそういう事例なのかは判断できないが、とかく「窓口」を設置するとそこで人的リソースが膨大に浪費されてしまうが故に企業や行政機関が困り果てているという話を本当に良く聞くようになった。要は「話し相手サービス」になってしまうのだという。無料相談と題したサービスのみならず、明らかに営利目的のサービスの一貫として設置している窓口でさえ、毎日一銭にもならないオペレーターへの話をしたいが為に電話をかけてくる自称のクレーマーや購入検討者や相談者たちがゴマンといるのだそうだ。オペレーターを指名してくる猛者までいるそうで、その電話をかけてくる人々のほとんどは中年以上らしい。電話、メール、ウェブの送信フォームなど、恐るべき長電話と長文メールが企業や行政を悩ませているのだ。そりゃ、その対応にも人が必要となり、無視したらしたで更なるモンスター化だ。そりゃブラックリストというよりもモンスターリストが必要となってくる。
ブラック企業という言葉は既に広く浸透した。モンスターという表現もかなり広く使われているとは思うが、いかんせん企業などはお客様情報であり個人情報であることは一切外には出せないものだから、この数年のモンスターたちに苦しむ窓口側の阿鼻叫喚はなかなか外に出てこない。個人情報保護ということは理解できるが、特にここ数年でのモンスターたちの暴れっぷりはもっと社会問題として議論されるべきだ。闇雲に企業や商店を潰すまで暴れるといった性質のモンスターたちは社会悪としてもっと広く認知されるべきだと考える。普段は何食わぬ顔で生活しているが、猛烈に企業に理不尽なクレームを出したり、企業のみならず自営業でなんとか踏ん張っている人々に襲いかかっているモンスターたちが確実にいるのだ。この保険会社の対応はまずかったが、そういう状況になってしまっていることには若干同情している。そして保険の相談じゃない相談、もとい雑談がどのくらいあったのかも気にはなる。その数を公表すれば結構この保険会社への同情が寄せられるとは思う。
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