GW中に山の遭難者が続出。それについて「山は危険だ」と警鐘を鳴らしているテレビのニュース番組の数々。TBSの朝のニュース番組ではアナウンサーが「山ガール・ブーム」にも触れていた。要はブームで登山者が増えてしまったことが遭難者の増加に起因しているという分析。遭難者の救出には税金も使われていることにも触れていた。
おいおい、テレビなどのマスメディアが散々登山ブームを煽っていたというのに今更なにを言っているんだ?勿論、登山をブームとして煽ったメディアと現在の遭難事故続出について報道しているメディアでは関係各位が異なることもあるとは思うが同じ局であることは間違いない。一方で登山という命を懸けたいわば冒険をブームのように煽り、一方では遭難を懸念するとは無責任で無自覚というタチの悪い事故誘発だ。登山は無理してやるにはリスクが高過ぎる。そもそもレジャーですらない。レジャーと言えばハードルが一気に低くなるが高尾山でも人は死ぬ。そういう冒険だ。
余りに登山が危険だ、危険だと叫ぶと大袈裟に聞こえるかもしれないが実際は大袈裟ではない。ミジンコが国内で登山をほとんどやらなくなったのは自分の登山ができないからだ。何度半年前から計画を立てて訓練も兼ねた登山をやろうとしても現地では常に遭難者や行方不明者たちがいて、強制ではないものの山のルールとして自分たちの登山よりも人探しが優先となり訓練にならないからだ。その位の頻度で山では困っている登山者たちがいる。なにも起きていない山なんてあるんだろうか?と思うほど登山者の増加に伴い事故も増えている。ちゃんとルートが整備されている富士山で救急隊がどれほど駆けつけているのかを考えれば他の峰のリスクがいかに高いのかは想像できるはずだ。幸いにして遭難者の多くは単に動けなくなったくらいで命に別状はないのだが県警やボランティアの救助隊がいなければ低体温症で命の危険もあったはずだ。山では夏でも低体温症になる。何年、何十年と登山経験がある登山者たちでも遭難する。登山はブームでやるような分野ではないのだ。
確かに高尾山で「命の危険」を感じることはそうはないのであろうが安全な場所ではないのだ。ましてや遭難のニュース映像で映し出される山々の険しいこと。安易にレジャーとするには余りにも危険だ。遭難したときにブームを煽ったメディア関係者たちは救助に来てくれない。遭難のニュースで彼等の仕事が増えるというなんとも言えない結果となるだけだ。さすがにメディアも遭難事故を望んではいないだろうがブームを煽るときにリスクを承知でも煽り戦略を決行していることは疑いようもない。良識のある登山家ならば広く多くの人々が山に入ることのリスクを重々承知しているのだからオススメはしない。真面目に平和に生きて来た人々がわざわざ山で死ぬことはないのだから。
こう言ってはなんだがミジンコも含めて、英語で言えばエクストリームなこと、日本語で最適な言葉が見つからないが究極的なことをやって命のリスクを楽しむ常軌を逸した行為とでも言えば良いのだろうか、そういうクレイジーなことをたまにやって楽しむ人々が山で死んだところで自業自得であろうし本望でもあろう。いわば大馬鹿者たちが危険なことをやってそれが成功するときの快感を味わっているというイカれた行為なのだ。ただし、クライミングやスカイダイビングなどのエキスパートたちは身体能力も尋常ではないし、日々の鍛え方も普通ではない。今回のGWでも続出した遭難した高齢な登山者たちとは生物として異なるといっても良いくらいに生存能力が異なるのだ。イモトアヤコの登山企画を見守っている人々は多いので彼女に同行している山岳ガイドたちの人間離れした登山能力と精神力は結構知られたことだろう。さすがにマナスルやエベレストをレジャーと考える人はいないだろうが登山は本来はああいった能力と精神力を持つ人たちがやるべきことなのだ。確かに高尾山でマナスルに登るスキルのほとんどは使うことはないが登山家としての前提は本来はそれほど変わるべきことではない。
正直言って、なぜ大した利権も見えてこない登山をメディアがあれほど推したのかが分からない。通常メディアが異様に推す対象の背後にはなんらかの大きな利権が見えてくるものだがこと登山に関してはどこかが特別に儲かったといった話を聞かない。せいぜい登山用の製品が売れたくらいだろうがそれも莫大な利益を上げているといった話ではないようだ。ちょうどネタが無いときに視聴者の反響の良かった企画が登山関連だったのではないだろうか?一時期、やたらと芸はないし登山能力も低い芸能人たちが登山をしている番組が放送されていた。そういう番組に参加した芸能人たちも製作した番組スタッフたちももう登山はやっていないかもしれないというのに、登山ブームはどんどん一人歩きしていった感すらある。そしてこのGWの恐るべき数の遭難事故。もっと安全なGWの過ごし方がいくらでもあるというのに登山を選んで、そして生還したところで一般人なのに記者に囲まれてしまうとは気の毒に感じる部分もある。誰も望んで遭難はしないのだがそれが避けられない状況に陥るのが山だ。レジャーで登山はちょっとどころかだいぶ違う。メディアはブームを画策した責任を取って登山の現実をちゃんと伝えていく義務がある。
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