4ー6月のGDPは年率にすると-6.8%もの落ち込み。これは震災直後の平成23年1ー3月GDPの-6.9%に次ぐ深刻な落ち込み。震災直後の落ち込みは理由が明確にあり、その後の復興で回復できる見込みが最初から立っていたのだから今回の落ち込みの方が事態は深刻だ。単に政治の失策でGDPがここまで落ち込んだのだ。消費税増税をすればこうなることは容易に想像できたというのにそれでも増税を断行した安倍政権の明らかな判断ミスだ。
そんな中、本日の安倍総理のすっとぼけた発言。「1~6月(の半年間)でならして見ると、前年10~12月より成長している。政府としては冷静な経済分析を行いながらしっかり対応し、成長軌道に戻せるよう万全を期したい」 詳しくは→
GDP落ち込みに首相「ならすと成長している」(Yahoo!ニュース 読売新聞)
どうあっても消費税を10%まで上げたい思惑が透けて見える発言だ。消費税増税前の駆け込み需要があった1ー3月を含めた半年分の「ならし」で見れば前年の10ー12月よりも上がっているのは当たり前のことだ。
次の7ー9月GDPいかんによって10%へ引き上げるのか否かを判断するという方針を示している以上、安倍政権としては景気が上がっているという幻想を国民に抱かせて消費税10%を納得させたいということなのだろう。現実は上の画像にもあるように数字(棒グラフ)は嘘をつかない。4月に消費税増税が無ければまだ景気は横ばいくらいで済んだかもしれないのに、安倍政権はいわゆる「やっちゃった」をやった後でその功罪の分析すら拒否して消費税10%がまるで決定事項のように振る舞っている。安倍政権を盲目的に支持していた層もだいぶ目減りした感がある。実際、支持率も下がり気味で今後も支持率が上がるための材料に乏しい。
安倍政権は中国、韓国に対しての対応で国民のルサンチマンを上手く引き出しては利用しているが、そのやり方はもってせいぜい数年だろう。どれだけ安倍政権のおかげでなにかが良くなったと思おうとしても、肝心の生活に直結した景気が悪ければ国民の不満は出てくる。景気回復を政治の力ではなくて増税でしか解決できないのならば、それは政治家たちが無能だということだ。誰だって本来は無かったはずの返済不要の資金を毎年与えられれば会社経営はできる。増税頼りの国会議員たちはまさに今はそんな経営者たちと化している。
安倍総理の「ならしで見ると」という発言は本人も自民党総裁選の頃には自分がそんなふざけたことを言うなんて予想だにしなかった言い訳だろう。当時の安倍総理はもっと自信に満ちていた。消費税増税がもたらすこの-6.8%なんて想像もしていなかったことだろう。景気についても数字についてもとても強いとは言えない人物だからこそ危機感が薄かった。景気回復はそんなに簡単なことではないし、消費税増税後の冷え込みがどれほどのインパクトをもたらすのか、生活苦を経験したことがない人にはなかなか伝わらないものなのだろう。実際は3%から5%に上がった後、ずっと日本はその後遺症に苦しんできたのだ。それを本当に実感していない人物たちが安倍政権の中枢には何人もいる。そこが安倍政権の重大なリスクとして顕在化している。
主食の米がまったく安くもなく、生活にかかるコストも住宅も世界的に最も高い水準の日本なのだ。確かに治安は良く、国民のモラルが高いとても住みやすい国ではあるが、生活費はかなりかかる上に老後の保障も乏しい。年金と生活保護費に不平等など解決されないままの社会保障も少なくない。そういう暮らしていくには結構大変な国で消費税8%は高過ぎるのだ。老後に貯蓄ゼロでも生きていける北欧の国やプール付き車庫3台の住宅が2,000万円もしないで購入できる家が一生の買い物というほどにはならない外国の基準と比較して、日本の消費税は諸外国よりも低いという論理はおかしい。日本で生きていくことにはコストがかかり、それも政治の失策続きによって生じている以上、せめて生活にかかる税である消費税くらいはゼロかゼロに近い税率にすることが消費増加、景気回復の有効的な政策なのだ。それをあろうことか駆け込み需要で上がった四半期を含めた「ならし」で景気回復していると図々しく言い放つ安倍首相は国民の味方になっていない。ご自分の発言を猛省して、ちゃんと首相として少しは景気については感覚ではなく数字を見て消費税増税の撤回こそが景気回復の切り札であることに気がついていただきたいものだ。消費税を5%に戻せば、日本中で起きている便乗値上げも消えていくことだろう。そうすれば消費も回復して景気も上がる。景気が上がれば国の税収が増えるのだから、そもそもの増税論が霧散する。国の税収が伸びてくれば、景気回復があやふやなときに法人税減税などで大企業に媚びるという愚策も必要なくなる。国の収入が増えた上で更に儲けているところからはガッツリ取れる強気の景気対策を次々とできれば、むしろ国民へは減税すらも可能になる。安倍総理がやろうとしていることのまるで真逆のことだが、こっちのやり方の方が現実的だ。消費税10%にして我慢に我慢を重ねた国民がどのように景気回復を実感できるのか?その方が非現実的だ。
安倍政権はもうすぐ2年になる。安倍総理は覚えておられるのかどうか分からないが2年で国民に景気回復を実感させると当初は公言していた。もうすぐ2年だというのにその気配はあるだろうか?この4-6月四半期では消費の鏡ともいえるデパートの売上が激減したのだ。自動車輸出販売額も激減している。内需で苦しみ、輸出販売でも苦戦中なのが日本の現状だ。それに加えて原発再稼働が進まない中での燃料輸入による莫大な貿易赤字だ。この状態での増税はトライアスロンやってヘロヘロな選手から1リットルの献血を願い出るような酷いお願いだった。そんな酷いお願いを安倍総理は国民にしたということの自覚すら無さそうなところが大問題だ。「ならし」なんて冗談じゃない。そりゃ原始時代から「ならし」で見れば日本は豊かになっている。
[35回]
PR