GACKT(←初めて正確なスペルを知った)さんという芸能人がパリのホテルで露骨な差別に遭ったと公表して少しばかり話題になっているとか。彼が詳細にその内容を語っており、その弁を疑うつもりはない。ホテル内のビュッフェスタイルのレストランで最初に座ろうとした眺めの良い席ではなく、奥の席に移るように店員に促されたのだそうな。腰掛けてから移れと言われたのだそうでそれ自体が尋常ではない。彼が不穏に思ったことは頷ける。その後、他のアジア系の客も奥に案内されている等の状況から、それを差別と考えて抗議の意味も込めて一度退店してから再び入店して希望の席についたのだとか。
場所は空港近くのホテルとのことで、その空港がシャルル・ド・ゴール空港ならば思いつくホテルがいくつかあるが正確なことは分からない。差別があったのかどうかも、お客様が差別を感じたのならばホテル側に問題がある。
ただし、ネットの意見などを見ると人種差別についてしか語られていないので少しばかり横槍を入れたくなった。それが人種差別であるのか否かも当ブログでは断定できないが、場所がチップ制度の国でのこととなるともっと考えるべき要素がある。日本人にはなかなか無い考え方ではあろうが、一流と称されるホテルのカフェレストランの給仕でさえ、客を選別するのだ。場所がパリともなるとその姿勢はあからさま過ぎてひくほどだ。つまり、人種以前に客のステータスで選別、いやここでは差別というべきか、そういう無礼なことを平気でやる接客業従事者たちがゴマンといる社会、それがパリというものだ。
アジア系の客たち、特に観光客であることが丸分かりな客たちがフランス語ではなく母国語で大声で会話をすることを承知している給仕たちはまるで喫煙席と禁煙席の区別のようにお客様を誘導する。つまりはフランス語を母国語とするお客様たち、つまりはフランス人たちが理解できない言葉のシャワーを浴びないようにする。そうすることでフランス人客からのチップの減少を防いでいる。では奥に追いやられたアジア系の客たちは不満に思い、チップを減らすのかといえばそうとも限らない。アジア系はガイドブックに従ってチップを支払う超お人よし民族(日本人だ!)とそもそもチップの支払いが渋い特定アジア国家の人々で構成されているので給仕もチップの増減に影響がないことを心得ている。そんな露骨な態度を給仕やフロアマネージャーがするわけがないと思うそこのあなたはとても日本人らしくてイイヒトなんだろうが甘い。パリではそれが起きる。
つまり、人種差別と言えなくもないが、給仕係などチップで生計を立てている人々の必死さは人種を気にしているというよりも収入を気にしているという見方の方が概ね合致しているはずだ。どちらにしろ給仕の態度は褒められたものではないが、アジア人だから差別されているというのはいささか古い考え方のような気がする。こう言ってはなんだが、例えば日本人観光客でもまったく差別を受けずにパリ観光を楽しんでいる人々もいるはずだ。要はそういう観光客たちは金持ちに見られているということだ。そりゃ高額なチップが期待できる客は最高のテーブルに案内するだろうし、大量買いするような客にはパリの接客業の人々は満面の笑みを見せることだろう。日本人のように何も買わないで店を去るお客様にも「ありがとうございました」という接客が当たり前に感じる文化で育っていると、パリの冷酷無比な接客に仰天するやもしれないがそれがあの都市なのだ、ぐわーはっはっはっ!!!・・・・正直、イヤな都市だ、ほんとに!
GACKTさんが感じたことも真実であろう。差別とは感じた側の意見を考慮するべきであるし、彼はあくまでもお客様だったのだ。ホテル側の姿勢はどう考えてもおかしい。ただし、単純にそれを人種故の差別とすると落とし穴があるような気がする。それ以前に収入、つまり金の問題が生じているのだ。日本人からしてみれば接客業にあるまじき不遜な態度と感じられることも致し方ないがそういう街もあるということだ。人種差別もあるだろうが、それ以前にチップ優先社会では例の「おもてなし」とはかけ離れた態度を取る接客業に携わる人々もいる。
ただし、チップ制度は悪いことばかりではない。給仕への感謝の気持ちを直接的に表すことができるチップは当ブログの管理人ミジンコの場合はむしろ助かっている。カリフォルニア州アーバインという地域の長年顔見知りのホテル内のレストランの給仕の女性がシングルマザーになる決断をして出産直前まで仕事をしていた。いつも明るくコーヒーのおかわりを間髪入れずに注いでくれるデキる人だ。それにしても彼女のおなかはパンパンに膨れていて心配になったほどだ。そのホテルを訪れたのが3ヶ月ぶりくらいだったので久しぶりに見た彼女は普通に仕事をしていることが不思議なほどおなかが大きくなっており、ミジンコはまさに口をアングリ、唖然とした。「州法どうなっているんだ!?」と冗談をかましたが、勿論、稼がなければならない事情くらいは察していた。人生は厳しい。数々の補助と条例で守られているとはいえ、シングルマザー生活は厳しい。普段からそんなに現金を持ち歩いていないミジンコだったのでマネージャーを呼んで、クレジットカードでチップの割合をこれこれこういう風にしたくて、その行き先はその給仕の女性に確実に行くようにしたいのだけれど大丈夫かな?正確な宛名を書くために彼女のフルネームのスペルを教えて欲しい(←ちょっと恥ずかしいw)といった質問をした。マネージャーの説明は流暢だった。「何回か同じことを他のお客さんたちに質問された?」とミジンコ。「ええ、たくさん」とマネージャーがニッコリ。既にプチ基金が設立されていたようだ。チップ制度自体はこういう時に役立つ。
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